婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

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補完編その1 結婚の報告と、報告の思い出(1)

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「……お父様や、おじ様達……。今夜の目的に、気付いてるかな……?」

 王宮での騒動が終わってから、3日後の夜。ロザス家にそれぞれの家族と使用人さんをお呼びして、あたし達は今――その全員が待機しているダイニングへの扉に耳を当て、内部の様子を窺っていた。

「…………『どんなお料理が出てくるのかしら?』とか、『2人の共同作業か。楽しみだな』とか『良い匂いが漂っていた。非常に期待できそうだ』とか喋ってる。俺らのそういう話題は、一切挙がってないようだな」
「お父様達にとっては、まだ3日・・・・だもんね。予想通りで一安心だよ」

 少しでも早く結婚したい、そんな結婚衝動で一杯になってるとは思われてない。カムフラージュのイベント『みんなへの感謝の気持ちを込めて、2人で料理を作ります。食べてください』を、信じてくれてるみたい。

『でも……。メインは共同だけど、サラダはアルフ兄さんが、スープは姉ちゃんが担当するんだよね? …………姉ちゃんはまだ、お菓子が限界だし……。大丈夫かな……?』
『プロ同然のアルフレッド君が隣にいて、アドバイスもくれるはずだ。大丈夫だろう』
『…………父さん。姉ちゃんはキッチンに入る前に、「誰の手も借りずに一品完成させるわよっ!」って意気込んでたんだよね……』
『ぁ……』

 扉の向こうから、家族のかつての被害者たちの今にも泣きそうな声が漏れてきた。
 だっ、大丈夫! 意気込んでみたものの雲行きが怪しくなって、アルフレッドに助けてを求めてるからっ。ちゃんと美味しく食べられる料理が出来てるから、安心してっ。

「……やはり、あたし単独は早過ぎましたです。師匠、御協力感謝であります」
「どういたしまして。けどさ、リルは随分上手くなってるぞ? 自分が思ってる以上に、成長してるぞ」

 アルフレッドはポンポンと軽ーく頭を叩いて、ニンと笑ってくれる。
 もう……。この人は……っ。もぅ……っ。だから大好きなんだよ……っ。

「アルフレッドがそう言ってくれたおかげで嬉しくなって、にやけちゃう。けどけど、今は引っ込めておかなきゃいけないね」

 こういう風にニヤニヤニタニタしちゃってたら、バレちゃいかねない。なので表情筋達を必死に制御し、一生懸命普通の表情を作った。

「………………アルフレッド。あたしの顔、通常モードになってる?」
「ああ、ちゃんとなってるよ。俺は、どうかな?」
「アルフレッドも、問題なしだよ。お互いバッチリで――ふふっ。そういえば、あの時もこんなやり取りをしてたね」

 表情をチェックし合ってたら、ふと思い出した。

「実は俺も、ソレを聞いてて思い出してた。あの日も俺達、こんな風にしてたよな」

 それは今からおよそ4年前、あたし達が14歳の頃の出来事。

 この日も同じように家族や使用人さんみんなにココに集まってもらって、そのあと――。あたしとアルフレッドは、涙が出ちゃうくらい嬉しいけどとっっっっっっっても悔しい思いをしたのでした。

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