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第4話 嘘 アンブル視点(1)
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「アンブルちゃん、ちょっといいかな?」
「はい。なんでしょう?」
嫌な来訪があった日の翌朝、お屋敷で畑に行く支度をしている時のことでした。ノックと共に、ドファールくんがお部屋にいらっしゃりました。
「たった今、ライオ様からお返事が届いたんだよ」
ライオ様とは、この国の第三王子殿下。
第三王子殿下は農業に深い関心をお持ちで、その関係でドファールくんとは7年来のご友人という間柄。昨日の来訪で気になる点があったため、専用の伝書鳩を使って連絡をしてくれたんです。
「そうだったのですね。……いかがでしたか?」
「暗号を解析してみたら、思っていた通りの内容があったよ。あの男は正式な形で入国してはいるものの、僕らへの接触は国を通していなかった」
『安心してくれ、この件は「ラズオール」の王族に話を通してある。合法かつ正式な接触で、アンブルに危害を与えるものではない。むしろ、その逆なんだよ』
第三王子殿下はわたしの境遇を御存じで、ザルース殿下が接触すると知れば止めてくださるはず。なのにザルース殿下が会いに来ているどころか、そちらに関する情報がまったく入らなかった。
その点に違和感を覚え、確認を行っていたのです。
「王族に許可を取っていると言えば、自分達に有利に働くと考えたんだろうね。姑息なやり方だ」
「ですね。……そんな小細工をしてまで、わたくしを連れ戻そうとするだなんて……。よほどの何かが起きているのでしょうね」
あちらが改心したという可能性は、100パーセントありません。断言できます。
ただ、その原因は推測すらできません。
「だとすると、また接触を試みるだろうね。ライオ様にお願いをして、近づけないようにしてもらおうか」
「ご迷惑をおかけします」
「このくらいなんてことはないよ。すぐにもう一度送らせていただいて――父上? どうされたのですか?」
「……ドファール、アンブルくん。ふたりに残念な知らせがある」
噂をすればなんとやら。ザルース殿下がいらっしゃったそうです。
「あちらは、対面の許可が下りるまで門の前で待ち続けるつもりみたいだ。立場上、他国の王族に強く出れないのでな……。すまないが相手をしてやってくれるかい?」
「お任せください」
来てしまったのなら、仕方がありません。わたくしは――「僕もお供するよ」――ありがたいことにドファールくんも一緒に来てくださり、わたくし達は門の外で殿下と対峙したのでした。
「お手を煩わせてすまない。新しいお詫びを用意したんだ。話を聞いて欲しい」
「はい。なんでしょう?」
嫌な来訪があった日の翌朝、お屋敷で畑に行く支度をしている時のことでした。ノックと共に、ドファールくんがお部屋にいらっしゃりました。
「たった今、ライオ様からお返事が届いたんだよ」
ライオ様とは、この国の第三王子殿下。
第三王子殿下は農業に深い関心をお持ちで、その関係でドファールくんとは7年来のご友人という間柄。昨日の来訪で気になる点があったため、専用の伝書鳩を使って連絡をしてくれたんです。
「そうだったのですね。……いかがでしたか?」
「暗号を解析してみたら、思っていた通りの内容があったよ。あの男は正式な形で入国してはいるものの、僕らへの接触は国を通していなかった」
『安心してくれ、この件は「ラズオール」の王族に話を通してある。合法かつ正式な接触で、アンブルに危害を与えるものではない。むしろ、その逆なんだよ』
第三王子殿下はわたしの境遇を御存じで、ザルース殿下が接触すると知れば止めてくださるはず。なのにザルース殿下が会いに来ているどころか、そちらに関する情報がまったく入らなかった。
その点に違和感を覚え、確認を行っていたのです。
「王族に許可を取っていると言えば、自分達に有利に働くと考えたんだろうね。姑息なやり方だ」
「ですね。……そんな小細工をしてまで、わたくしを連れ戻そうとするだなんて……。よほどの何かが起きているのでしょうね」
あちらが改心したという可能性は、100パーセントありません。断言できます。
ただ、その原因は推測すらできません。
「だとすると、また接触を試みるだろうね。ライオ様にお願いをして、近づけないようにしてもらおうか」
「ご迷惑をおかけします」
「このくらいなんてことはないよ。すぐにもう一度送らせていただいて――父上? どうされたのですか?」
「……ドファール、アンブルくん。ふたりに残念な知らせがある」
噂をすればなんとやら。ザルース殿下がいらっしゃったそうです。
「あちらは、対面の許可が下りるまで門の前で待ち続けるつもりみたいだ。立場上、他国の王族に強く出れないのでな……。すまないが相手をしてやってくれるかい?」
「お任せください」
来てしまったのなら、仕方がありません。わたくしは――「僕もお供するよ」――ありがたいことにドファールくんも一緒に来てくださり、わたくし達は門の外で殿下と対峙したのでした。
「お手を煩わせてすまない。新しいお詫びを用意したんだ。話を聞いて欲しい」
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