婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?

柚木ゆず

文字の大きさ
4 / 22

第2話 2日後 俯瞰視点(1)

「卿、御夫人、イナヤ嬢。重ね重ね、申し訳ございません」

 2日後の、午前11時を少し回った頃。アスユト子爵家の皆様が――当主ロドン様、当主夫人エナール様、マティウス様、マティウス様の実弟ガブリエル様がいらっしゃり、応接室で相談が始まるや改めてロドン様が背を折られました。

「卿、頭をお上げください。マティウス殿も被害者である可能性も充分にありますゆえ」
「……痛み入ります。先ほども申し上げましたように、誠心誠意――胸襟を開いて応じさせていただきます。まずは、こちらが把握している情報をお伝えします」

 マティウス様がお戻りになられたあと、あちらでも緊急の会議が開かれていました。その結果――

 マティウス様が初めて『ルナ』と出会ったのは、初めて両家で挨拶を行った時。共有の趣味があり、早々に意気投合していた。
 ウチに2回目に訪れた際に『ルナ』とお喋りする機会があり、その際に自分は『ルナ』に惹かれているのだと気付いていた。
 その後3回目の接触の際に『ルナ』からも『マティウス様と結婚出来たら幸せなのに』と言われ、両想いだったと認識。我慢できなくなり、そうできる方法を模索し始めていた。
 あれこれ思案したものの見つからず、一時は諦めていた。しかしながらコッソリ二人きりでするお喋りが楽しくて仕方がなく、諦めきれなくなった。
 2人の夢を叶えるべく、無礼と承知で2人でお願いすることにした。

 ――そういった内容が、マティウス様の口から出ていたそうです。

「その際息子はスラスラと説明をしましたし、くだんの『ルナ』についても過去のやり取りまで一切詰まることなく事細かに語っておりました。聴取は我々3人に加えて家令を含めた5人に同席してもらったのですが、わたしを含め全員が『嘘を言っているとは思えない』と判断いたしました」
「あのあと――。我々も振り返りましたが、同じ結論に至りました」

『? それはこちらの台詞ですよ。ルナ様は、ちゃんといらっしゃったじゃないですか。あの場に』

『どこって。僕の隣で立っているじゃないですか』

『??? 身長は……154センチ、だそうですよ。体型は細身で、お顔はウサギを連想させます。服は本日もリボンが多いものをお召しになられてますね。とてもよくお似合いです』

 あの日発せられた言葉の中にも、表情の中にも、不自然さはなし。演技をしているようには見えませんでした。

「……マティウスよ。ルナという女性は、この部屋の中にいるのか?」
「ええ。イナヤ様のお隣に居ます。不安そうに父上のお顔を見つめていますよ」
「「「「「「「………………」」」」」」」

 マティウス様に視線を追って全員でその地点を見つめてみますが、あの時とおんなじ。誰も目視できませんし、触りも出来ません。

「そうか。……分かった。マティウス、少し席を外してくれ。お前抜きで話したいことがある」
「え? 父上……?」
「すまんな。少しだけだ、席を外してくれ」
「しょ、承知しました。し、失礼します」

 マティウス様は戸惑いながらも部屋を出ていかれ、アスユト家のお三方が神妙な面持ちで頷き合いました。
 マティウス様抜きで話したいこと。なんなのでしょう……?


あなたにおすすめの小説

「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢ですが、領地経営をしていたのは私です

希羽
恋愛
「お前のような可愛げのない女との婚約は破棄する!」 卒業パーティの会場で、婚約者である第二王子デリックはそう宣言し、私の義妹ミナを抱き寄せました。 誰もが私が泣き崩れると思いましたが――正直、せいせいしました。 だって、王子の領地経営、借金返済、結界維持、それら全ての激務を一人でこなしていたのは「可愛げのない」私だったのですから。 「承知しました。では、あとはミナと二人で頑張ってください」 私は手切れ金代わりに面倒な仕事を全て置いて国を出ました。 すると、国境で待っていたのは、隣国ガルガディア帝国の冷徹皇太子ことクライド様。なぜか彼は私を溺愛し、帝国で最高の地位と環境を与えてくれて……。

これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?

satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。 結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…

完璧な妹に全てを奪われた私に微笑んでくれたのは

今川幸乃
恋愛
ファーレン王国の大貴族、エルガルド公爵家には二人の姉妹がいた。 長女セシルは真面目だったが、何をやっても人並ぐらいの出来にしかならなかった。 次女リリーは逆に学問も手習いも容姿も図抜けていた。 リリー、両親、学問の先生などセシルに関わる人たちは皆彼女を「出来損ない」と蔑み、いじめを行う。 そんな時、王太子のクリストフと公爵家の縁談が持ち上がる。 父はリリーを推薦するが、クリストフは「二人に会って判断したい」と言った。 「どうせ会ってもリリーが選ばれる」と思ったセシルだったが、思わぬ方法でクリストフはリリーの本性を見抜くのだった。

(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。

青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。 アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。 年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。 「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」 そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。 ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。 異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。 妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。 その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。 家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。 ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。 耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

【完結】「お姉様は出かけています。」そう言っていたら、お姉様の婚約者と結婚する事になりました。

まりぃべる
恋愛
「お姉様は…出かけています。」 お姉様の婚約者は、お姉様に会いに屋敷へ来て下さるのですけれど、お姉様は不在なのです。 ある時、お姉様が帰ってきたと思ったら…!? ☆★ 全8話です。もう完成していますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。