婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?

柚木ゆず

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第5話 お願いとお願い イナヤ&ガブリエル視点

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「………………」
「………………」
「………………」
「………………」

 お父様、お母様、ちょうど騒ぎを案じて戻ってきてくださっていたミルリお姉様、そして勿論わたしも。アポイントメントなしでいらっしゃったガブリエル様のお話を聞き、言葉を失っていました。
 マティウス様のお芝居の裏に、そんな理由があったなんて……。

「そうしたくなる気持ちは分からなくもない――一部を除いて共感できはしますが、だからと言って実行していいとはなりません。あまりにも自己中心的です」
「ガブリエル様……」

 貴族として――次期当主となるべく生きてきた者の行いではない。その点だけではなく、わたしへの影響に関しても怒ってくださっていました。

「兄上は罪を正しく清算しなければならないのですが、現在『真実』は『予想』にすぎません」

 今はまだ、どこにも証拠がありません。証拠がない以上、どうすることもできません。

「ですので、皆様のお力をお借りしたく思います」
「こちらとしても当然、白黒つけておきたい問題。我々にできることがあれば、なんでもしましょう」

 わたしも――お母様もお姉様も、同じ気持ち。全面的に協力させていただきます。

「痛み入ります。……こちらが、私が考えた計画になっておりまして――」

 丁寧なお辞儀のあと、ガブリエル様が分かりやすく仔細を伝えてくださりました。

「――こうしておけば、兄上の罪は白日のもとに晒されることとなるでしょう」
「そうですな」「そうですわね」「ですわね」「そうですね」

 必ずや、マティウス様は仰られているように動かれる。お父様もお母様もお姉様もわたしも、確信しました。

「より効果を持たせるために、どうしてもアレを準備していただく必要がございます。お手間の発生、お許しください」
「そのくらい、大した手間ではありませんさ。そうですな、2日もあれば整うでしょう」
「でしたら決行はその次の日、3日後でよろしいでしょうか?」
「ええ、それでゆきましょう」

 そうしてわたし達はすぐ、そのための『仕込み』を始め――

 〇〇

「なんだって? 明後日、全員でマールルット邸に?」
「昨日マールルット邸でルナに関する調査を行っていた際に、卿からディナーをお誘いをいただいたのですよ」

 除霊の効果がある薬草が手に入ったそうで、その薬草をスープにすると効くらしい――。その際は家族全員で飲むと、より効果があるらしい――。
 同じく事前に用意した台詞を使い、

「藁にもすがりたい思いだ。ゆこう」

 ちょうど父上達には予定がないこともあり、つつがなく決定したのだった。


((……兄上。これ以上、好き放題はさせませんよ))

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