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「アンリエット。今日は買い物をして帰ろうか」
次の日の放課後。私達はすぐ家には帰らず、帰路とは反対方向にあるマルシェ(市場)を訪れています。
こちらには安くて質の良いお肉やお野菜などが並ぶため、下級貴族――平民並みの収入しかないクラメール家にとっても、とても大事な場所。以前から頻繁に訪れている場所なのです。
「おや、クラメール家のアンリエット様じゃないですかっ。いらっしゃいませっ」
「急に変な噂が流れたり、婚約が破棄されてしまったり……。大変でしたね」
「失礼な話になってしまうのですが、二つ目の噂を聞いてビックリしました。お辛い過去があったのですね」
「ええ、そうなのです。両親の言いつけで伏せられていましたが、私は双子ではなくオシア孤児院の出身なのですよ」
ご両親の存在を消し続けるのは失礼だったから、そこを公表しつつ反撃できる作戦を使ったんだ――。昨夜お兄様から説明を受けていますし、そう思っていただけていたのは本当にありがたい事です。
なので私は笑顔で、店員の皆様にお返事をしました。
「……俺がアンリエット様の立場なら、自棄になってますよ……っ。尊敬、してます」
「ご家庭の事情で、今はシャルル さんがクラメール家の当主なんですよね? アンリエット様を、頼みましたよっ」
「今までみたいにダラダラされていると、あっという間にクラメール家は崩壊してしまいます。本当に頼みますよっ!」
「あー、はい。自分なりに頑張ってみます」
お兄様はあははと笑い、ぽりぽりと鼻の頭を掻きます。
シャルルお兄様はすごい方なのですが、今はお外ですからね。心の中でそっと否定をさせてもらって、頭を下げました。
「アンリエット様っ、今日はサービスさせてもらいます! なんでも遠慮なく仰ってくださいねっ」
「こっちも、サービスさせてもらいますよっ! 個数制限なし、大割引で提供しますんでっ」
「皆様、ありがとうございます。ですが他のお客様に申し訳ないので、お一つずついただきますね」
トマト。タマネギ。ニンジン。マッシュルームなどなど。数日分の食材を購入し、マルシェの端にある休憩所でちょっとお休みします。
今日は皆さまのご厚意で、お金が浮きましたからね。お兄様が提案してくださり、特別に大好物――甘いマフィンを買って、二人で一緒に食べることになりました。
「いただきます」
「いただきまーす」
私達は揃って、ぱくり。マフィンの優しい甘さとバナナの甘さがふわりと広がって、お口の中が幸せな状態になります。
大好きな人と食べる、大好きな食べ物。嬉しさは2倍ではなく2乗で、自然と顔が緩んでしまいます。
「アンリエット、俺のもおすそ分け。チョコレート味をどうぞ」
「ありがとうございます。でしたら私も、おすそ分け、です」
お互いにあーんをして、ぱくん。チョコレートマフィンもすっごく美味しくて、もう一度頬が緩んでしまいました。
(……俺が知る限り、ソレは世界一のスマイル。とても光栄で見ていてこっちも幸せな気持ちになれる顔であり、誰も勝てない本当に可愛い顔なんだよね)
(そっ、そう、でしょうか……。そう、ですか、ね……?)
(うん、そうだよ。だから何があっても、その笑顔を絶対に守る。何もかもが片付いたら、また一緒にマフィンを食べようね)
(はいっ。また、一緒に食べましょうっ)
私達は見つめ合ってコクリと頷き、明るい表情のまま立ち上がります。
食べ終えて楽しい時間は一つ終わってしまいましたが、まだ楽しい時間は残っています。今夜は初めてお兄様がご飯を作ってくれるので、実を言いますと今朝から楽しみにしていたんですよね。
「お兄様。お家に帰りましょうっ」
「そうだね。…………2匹尾行してはいるものの、仕掛けてくる気配はなし。この様子だと、襲撃は今夜、だな」
「??? お兄様、どうかされましたか?」
「なんでもない、なんでもない。帰ろ」
そうして私達はマルシェをあとにして、殆どの荷物をお兄様が持ってくださってトコトコ。茜色に染まる道を2人並んで歩き、新たな楽しみが待つ家へと戻ったのでした。
次の日の放課後。私達はすぐ家には帰らず、帰路とは反対方向にあるマルシェ(市場)を訪れています。
こちらには安くて質の良いお肉やお野菜などが並ぶため、下級貴族――平民並みの収入しかないクラメール家にとっても、とても大事な場所。以前から頻繁に訪れている場所なのです。
「おや、クラメール家のアンリエット様じゃないですかっ。いらっしゃいませっ」
「急に変な噂が流れたり、婚約が破棄されてしまったり……。大変でしたね」
「失礼な話になってしまうのですが、二つ目の噂を聞いてビックリしました。お辛い過去があったのですね」
「ええ、そうなのです。両親の言いつけで伏せられていましたが、私は双子ではなくオシア孤児院の出身なのですよ」
ご両親の存在を消し続けるのは失礼だったから、そこを公表しつつ反撃できる作戦を使ったんだ――。昨夜お兄様から説明を受けていますし、そう思っていただけていたのは本当にありがたい事です。
なので私は笑顔で、店員の皆様にお返事をしました。
「……俺がアンリエット様の立場なら、自棄になってますよ……っ。尊敬、してます」
「ご家庭の事情で、今はシャルル さんがクラメール家の当主なんですよね? アンリエット様を、頼みましたよっ」
「今までみたいにダラダラされていると、あっという間にクラメール家は崩壊してしまいます。本当に頼みますよっ!」
「あー、はい。自分なりに頑張ってみます」
お兄様はあははと笑い、ぽりぽりと鼻の頭を掻きます。
シャルルお兄様はすごい方なのですが、今はお外ですからね。心の中でそっと否定をさせてもらって、頭を下げました。
「アンリエット様っ、今日はサービスさせてもらいます! なんでも遠慮なく仰ってくださいねっ」
「こっちも、サービスさせてもらいますよっ! 個数制限なし、大割引で提供しますんでっ」
「皆様、ありがとうございます。ですが他のお客様に申し訳ないので、お一つずついただきますね」
トマト。タマネギ。ニンジン。マッシュルームなどなど。数日分の食材を購入し、マルシェの端にある休憩所でちょっとお休みします。
今日は皆さまのご厚意で、お金が浮きましたからね。お兄様が提案してくださり、特別に大好物――甘いマフィンを買って、二人で一緒に食べることになりました。
「いただきます」
「いただきまーす」
私達は揃って、ぱくり。マフィンの優しい甘さとバナナの甘さがふわりと広がって、お口の中が幸せな状態になります。
大好きな人と食べる、大好きな食べ物。嬉しさは2倍ではなく2乗で、自然と顔が緩んでしまいます。
「アンリエット、俺のもおすそ分け。チョコレート味をどうぞ」
「ありがとうございます。でしたら私も、おすそ分け、です」
お互いにあーんをして、ぱくん。チョコレートマフィンもすっごく美味しくて、もう一度頬が緩んでしまいました。
(……俺が知る限り、ソレは世界一のスマイル。とても光栄で見ていてこっちも幸せな気持ちになれる顔であり、誰も勝てない本当に可愛い顔なんだよね)
(そっ、そう、でしょうか……。そう、ですか、ね……?)
(うん、そうだよ。だから何があっても、その笑顔を絶対に守る。何もかもが片付いたら、また一緒にマフィンを食べようね)
(はいっ。また、一緒に食べましょうっ)
私達は見つめ合ってコクリと頷き、明るい表情のまま立ち上がります。
食べ終えて楽しい時間は一つ終わってしまいましたが、まだ楽しい時間は残っています。今夜は初めてお兄様がご飯を作ってくれるので、実を言いますと今朝から楽しみにしていたんですよね。
「お兄様。お家に帰りましょうっ」
「そうだね。…………2匹尾行してはいるものの、仕掛けてくる気配はなし。この様子だと、襲撃は今夜、だな」
「??? お兄様、どうかされましたか?」
「なんでもない、なんでもない。帰ろ」
そうして私達はマルシェをあとにして、殆どの荷物をお兄様が持ってくださってトコトコ。茜色に染まる道を2人並んで歩き、新たな楽しみが待つ家へと戻ったのでした。
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