行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず

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プロローグ レアナ・ノルエット視点

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「レアナちゃん、今日は付き合ってくれてありがとうね」
「お礼なんて要りませんよ。だってわたし達は夫婦なんですから」

 夏が過ぎ去って秋が訪れ、すっかり蒸し暑さとは無縁となった夜の中。わたしは隣を歩くヴァランタンくんに、パチッとウィンクを返しました。

「困った時は助け合うのは当然です。それに、久しぶりに一緒にお買い物ができて楽しかった。むしろ感謝ですよ」

 ヴァランタンくんの家は代々この街で最も歴史のある宿屋『ホライザ』を営んでいて、ヴァランタンくんは現在副支配人。その関係で急遽要るものができてしまい、運よく手が空いていたのでお店への同行を名乗り出たんです。

「増築作業が佳境に入ったり、アレがあったり。当分は一緒にウロウロできないと思っていたので、ラッキーでした」
「増築とアレが重なるだなんて、タイミングが悪かったよね。お互い本当に忙しくて、うん、僕も嬉しいよ」
「11月になったら、どこかに出かけたい――ところですが、来月は今月以上に慌ただしくなりそうですね」
「だね。『トルアテール祭り』があるもんね」

 この街には4年に1度『1か月間』開かれるお祭りがあって、その間は街中で様々な催し物があるため国中から――周辺国からも、大勢の方がいらっしゃります。観光客が増える=宿に泊まる人が爆発的に増えて、すでに11月分は40室全てが全日埋まっているんですよね。

「それにレアナちゃんは、あっちの方でも忙しくなるね?」
「はい。11月は、ホライザ内外両方を元気に駆け回ります」

 わたしがこの街にやって来たのも、ヴァランタンくんと出会えたのも、お義父さんやお義母さんや『みんな』がいるホライザの一員になれたのも、ヴァランタンくんと結婚できたのも、あの時トルアテール祭りが開かれていたから。
 新しい『今』をくれたトルアテール祭りには心から感謝していて、なにか恩返しはできないか街の人に相談したんです。そうしたらなんとお祭りの会長さんから催し物のひとつ――ダンスの振り付けや演出を頼まれて、実行委員としてトルアテール祭りに関われることになったんです。

「あの時の経験が、こんな形で役に立つとは思いませんでした。人生、どこで何か役に立つか分かりませんね」
「うん、僕もそう思うよ。人生って、不思議で面白いよね」

 ヴァランタンくんは斜め右――『ホライザ』がある方角を見ながらクスッと笑い、わたし達は肩を竦め合いながら進みます。
 スタスタスタ、トコトコトコ。
 他愛もない内容、だけどとっても楽しくて仕方がないお喋りをしながら帰路を歩み――

「ん? あれは……」
「? どうしたんですか? 路地の方に、なにか――あ! 人が倒れていますっ!」
「男性が1人、女性が2人か。飲み過ぎで倒れている酔っぱらいには見えないね。……いってみよう」
「はいっ!」

 その途中で人を発見し、わたし達は大急ぎで駆け付けた――のですが、その時のわたしはまだ知りませんでした。


 その人達が、嫌な縁がある人達だということを。
 そしてなにより、その後『あんなこと』が起きてしまうことを。


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