貴方様に大事なお話があります ~正直に答えてください~     

柚木ゆず

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プロローグ 表の顔と裏の顔 俯瞰視点(2)

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「この薔薇はね、アマリアの姿を思い浮かべながら選んだんだよ。色んな花が候補にあったのだけど、美しい君にはこれしかないと思ったんだ」
「このブドウは生っていたものの中で、最も上質なものを選んできたのですよ。やはり『友』には、最高の逸品を味わっていただきたいのでね」

「ああごめんごめん、ずっと俺が喋ってしまっているね。ほら、先週はお互いに都合が合わなくて会えなかっただろう? 会いたいのに会えなくて我慢をしていたから、ついつい喜びが爆発してしまっているんだよ」
「はっはっは。前週は事あるごとに、会いたい会いたいと言っていたのですよ。願いが叶ってよかったな」

 薔薇とブドウを差し出したカシアスとジェスは、更にゴマ擦り。心にもない笑顔を貼り付けて声を弾ませ、しっかりと場を温めてゆきます。
 そうして合計6分間も相手を持ち上げた二人は、

《父上。そろそろ》
《ああ。いい頃合いだろう》

 密かにアイコンタクトを贈り合い、本題に入ることにしました。

「おっと、失礼。いつまでもこうしていてはいけませんな」
「いただいたお手紙には、極めて重要なとありました。一体何があったのですか?」

 日時を指定してまで呼び寄せたということは、かなりのことがあるということ。二人にはまったく思い当たる節がなく、やや緊張気味に当主ジョセフを見つめました。

「もしや……。そちらの――サンドレス商会絡みなのですかな? 我々の力をお貸しすればよいのですかな?」
「いえ。今日こうして御足労を願ったのは、婚約に関する話をするためなのですよ。……まずは、娘の言葉をお聞きください」
「???」「???」

 婚約、娘の言葉。それらにもまるで思い当たる節はなく、二人の脳内にはハテナマークが大量発生します。
 仲良く目を瞬かせて、おもわず首を傾げる。そうしていると当主の右隣にいるアマリアが再度、恭しくカーテシーを行い――

「………………」「………………」

 ――まもなく、カシアスとジェスが言葉を失ってしまう言葉が紡がれたのでした。


「カシアス様。貴方様は四日前の夜、わたくしに関する悪評を捏造されましたよね?」

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