上 下
4 / 59

第3話 謎、戸惑い アレクシア視点(1)

しおりを挟む
「バカな!! ぼっ、ボスコ君は何を言っているんだ!?」
「この子がイジメだなんてっ、あり得ないことだわ!! ボスコさんは何を言っているの!?」

 涙ながらに語られた一部始終を聞いた二人は、仲良く絶句。お父様とお母様は、激しく顔を歪めながら頭を抱えた。

「キアラの言う通りだ!! キアラは何もしてはおらん!! なぜならストレスは全てこのアレクシ――こほん! ストレスはあれだっ! 趣味や食事や運動で発散するような子なんだぞキアラは!!」
「それにそんな理由で妬んだり僻んだりする子じゃないわ!! 何もかもありもしないことだわ!!」
「そうなの!! だから何度もそう説明をしたのっ!! でも……ボスコ様は聞く耳を持ってくださらなくて……。しかも……。なのに治安局でも受理されちゃって、これから調査が行われるようになってるの……」

 今キアラの後ろには治安局員の方が五名いらっしゃって、邸内の人間の一挙手一投足を監視し続けている。
 この子は全てのストレスをわたしで発散していて、絶対に外で本性を晒しはしない。その言い分に関しては正しいはずなのだけど……。治安局が踏み切れるだけの主張が行われたのね。

「キアラっ、ボスコ君は治安局員になんと説明したのだ!?」
「何もしていないのに調査だなんてっ。なんて言っていたのっ!?」
「それがね……。クララ様が怖がるから入ってくるなって言われて、どんな会話があったか分からないの……。局員の方々も、いくら聞いても教えてくれないの……」

 その言葉を受けてわたし達に行われた説明によると、明かせば捜査にいくつかの支障をきたすとのこと。とにかく、客観的に見て説得力のある内容が、クララ様とボスコ様から出たみたいね。

「……ますます、腑に落ちん……。ボスコ君は、何を聞かされた――そうだっ、肝心のボスコ君はどうしたのだ!? 同行するのではなかったのか!?」
「『家』も絡む大きな出来事だから、リンダール家当主おじ様と合流してからいらっしゃるみたい……。それと、クララ様は……。私が叫んだから過呼吸になったとか言っていて……。ここには来られないから、ボスコ様に色々託しているみたい……」
「そ、そうか……。……キアラの部屋に、なにがあるというのだ……!?」

 わたしも――わたしとカタリナも気になって仕方がない、イジメの証拠。それを知るには到着を待つしかないからそのまま待機を続け、十数分待った頃ボスコ様達が到着された。

「ボスコさまっ! ボスコ様っっ!! 私はなんにも――」
「……待たせたな。では早速、事実を突きつけようじゃないか」

 キアラに言い寄られてこの子にすっかり惚れてしまい、いつもだらしのない笑みを浮かべられていたボスコ様。今日の彼は淡々とキアラを睨みつけ、不愛想に歩き出す。
 こうして――。第三者と家族立ち合いのもと、キアラの部屋の調査が始まったのだった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,393pt お気に入り:263

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,098pt お気に入り:19

夜の帝王の一途な愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,100pt お気に入り:85

ロリコンな俺の記憶

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:4,203pt お気に入り:16

お高い魔術師様は、今日も侍女に憎まれ口を叩く。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:759pt お気に入り:120

殿下は私に向けて、悲しそうに婚約破棄を宣告されました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:498

堅物監察官は、転生聖女に振り回される。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,175pt お気に入り:149

処理中です...