異世界からの「聖女」に婚約者を奪われた挙げ句、国外追放になりました。なんの問題もないけど。

「皆の者に告げたいことがある! セラフィーナ! おまえとは婚約を破棄する! 将来の国母となるのは、このユイナだ! 」

 王立学園での卒業パーティーの最中。エンブルグ王国王太子フェリクス・エンブルグは壇上で高らかに宣言した。彼の隣に立っているのは、婚約者である私、レンゼール公爵令嬢セラフィーナ・レンゼールではなく、「聖女」クロサワ・ユイナだ。

「さらに! この女は公爵家という自身の地位を利用して、ユイナを虐めていた! そうだろう? ユイナ」
「は、はい! 最初は制服を破られたり、呼び出されて男性と親しくするなと、責められるだけでしたが・・・」
「ユイナ、脅えるな」
「王子・・・。ッ、だんだんとエスカレートして、最終的には・・・階段から突き落とされて・・・」
「ユイナ、よく話してくれたな。怖かっただろう・・・。セラフィーナ! 俺が助けなければ、ユイナは一生残る傷を負っていたかもしれないのだぞ! この件は見過ごせない! よっておまえを国外追放とし、レンゼール公爵家は男爵家に降下だ! 貴族籍を剥奪しないのはせめてもの温情だ! なにか申し開きはあるか! 」

(いったいなんなのかしら、この茶番劇は)

 二人はまだ気づいていない。私たちを取り囲む貴族たちが、次第に青ざめた顔になっているのに。

「申したいことは、三つだけですわ」


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