幼馴染と婚約者を裏切った2人の末路

柚木ゆず

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第11話 理由~室外で起きていたやり取り~ 俯瞰視点

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「卿。貴男のソレは、本心ではないのだろう?」

 エステェの父コンタンの要望によって応接室を出て、5分ほどが経過した頃でした。コンタンによる#説明を__誤魔化しを__聞いていたアドリアンは、短く息を吐き出しました。

「エステェ嬢は幼馴染の件で心を痛めていて、そんな娘を見てはいられない。我が家(いえ)に迷惑だってかけられない。……それら理由は、偽り。その実、そのようなことは一切考えてないのでしょう?」
「めっ、滅相もございませぬっ。わたくしは心よりそれらを思っておりまして――」
「否、それもまた嘘だ。……卿、わたしはね、貴男の考えていることは分かるのだよ。なぜならわたし達は、『同類』なのだからね」

 ――貴男からは、わたしと同じ匂いがする――。
 ――家であり自身の懐であり生活を豊かにするためなら、なんだって厭わない――。
 ――愛しい実の子だって、状況によっては『駒』にしてしまえる――。

 そんな男だ。
 アドリアンは同じ性質を持つが故に、コンタンが秘めしものに気付いていたのです。

「大きな商会を持つ侯爵家とのパイプ。そんな貴男が、こんなチャンスをみすみす逃すはずがない」
「………………」
「息子を心より愛していたエステェ嬢が率先して協力している理由、それは分からん。だがな、確実に分かっていることがある。少なくとも貴男とアドンが裏で手を組み、利害の一致で――相応の報酬が保証されているが故に、こうして動いていることは分かっているのだよ」
「っ! わっ、わたくしは――」
「卿、それを責めるつもりはない。仮にわたしが同じ立場に置かれたら、得をする方を迷わず選択するのだからな」

 アドリアンは嘘偽りない言葉を紡ぎ、「しかしだな」と再び口が動き出しました。

「わたしはどうしても、他国の貴族にコネクションを持つ彼女を引き込みたいと思っていてね。是が非でもエステェ嬢を手放したくないのだよ」
「……………………」
「そこで、貴男に提案がある。アドンではなく、わたしと手を組みはしないか?」

 ――わたしは当主だ、アドンよりも多くの『益』をもたらせるぞ――。
 ――財だけじゃない。なんなら商会のポジションを与えよう――。
 ――新たな地位と名誉をプレゼントしよう――。

 アドリアンは魅力的なものを次々と発し、ゆっくりと右手を差し出しました。

「貴族の子は、当主の命令には逆らえん。……どうかな、卿。『婚約せよ』と、当主命令を放ってはくれぬかな?」
「……………………」

 それらはコンタンにとって垂涎、喉から手が出るほど欲しく『ご褒美』でした。そのため――

「承知いたしました。喜んで協力させていただきましょう……!」

 コンタンの中にある天秤は『エステェとアドン』ではなく『アドリアン』へと一気に傾き、固い握手を交わしていたのでした。


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