全てを失った私ですが、以前より幸せです

柚木ゆず

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第5話 一年半の間に起きたこと 〇〇〇視点(1)

「可愛らしい小さな白鳥さんが沢山いて、微笑ましくてつい声をかけてしまいました。みんな目がキラキラしていますね。ここに来るのは初めてなのですか?」
「この子たちを褒めてくださり、ありがとうございます。はい、そうなんです。わたしと彼を含め、全員リンファエズ湖は初めてです」

 わたし達が暮らしている場所からここまでは、少々距離がある。時間的な面だけではなく予算的な面でも厳しめで、みんなでいつか行きたいと言っていたもののなかなか実現できずにいて、今回お祝い・・・ということで来訪が叶いました。

「『この子たち』……? 失礼ですが、皆さんは貴方達のお子さんなのですか……?」
「あ、いえ、そうではないんです。ここにいる子たちは、わたしが働いている孤児院で暮らしている子なんですよ」

 今から1年半前、エレア・ファーティナに関する全てを失ってから半日後。生活資金を得るために仕方なく、近くの街にある宝石店で、身に着けていたおばあ様の形見のネックレスを売却した直後のことでした。

『お嬢さん、随分景気が良いみたいっスねぇ?』

 その様子を見られてたようで、お金目当ての男性3人に囲まれてしまう。それが切っ掛けとなって、彼――マルクさんと出会うこととなりました。

『俺ら、金に困ってるんだ。そこにある沢山の金とご立派な服をくれませんかねぇ?』
『オレたち困りすぎてて、分けてもらえなかったら暴れるかもしれない』
『ご覧の通り俺達は善良な人間で、誰かを傷付けるのは辛い。お互い、嫌な思いをするのは嫌だよな? 全員幸せになれるように、全部頂戴よ――』
『みなさんっ、見てください!! か弱き女性が囲まれています!! みんなで力を合わせて守りましょう!!』

 ニヤニヤしながら手を差し出されている、その時でした。買いだし中のマルクさんが偶々通りかかって衆人の目を集めてくださり、そのおかげで男性たちは大急ぎで離れていって難を逃れられたのです。

『ありがとうございます。今のわたしには、このお金しかなくて……。本当に、助かりました』
『周囲の方々の力を借りただけ、僕は大したことはしていませんよ。……ところで……。何か、大きな御事情があるようですね?』

 少々場違いな出で立ちや、『このお金しかない』。そういった部分で訳ありだと察してくださり、今度はこの出来事が切っ掛けとなって新たな居場所に出会うこととなるのでした。


『……呪いによって全てを失った、貴族様……』


 

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