悪役令嬢だったわたしは

柚木ゆず

文字の大きさ
9 / 41

第3話 その頃~???~ 俯瞰視点

しおりを挟む
「おかしい! おかしいでしょっ!!」

 とある場所に建つ立派なお屋敷、その中にある一室。豪華な絨毯の上にお洒落な高級家具がいくつも置かれた、豪華絢爛な私室。
 キラキラとした輝きを放つその空間では、部屋の主が舌打ちをしていました。

「今日の朝に、あのニュースが飛び込んでくるはずなのにっ!! どうなっているのよっ!! もう1時間過ぎたわよ!?」

 壁に設置された、同じく高価な掛け時計。午前9時を示す長針と短針を鋭く睨みつけました。

「いつになったら来るのよ!? 何をやってるの!? 早くしなさいよ!!」

 もう一度舌打ちをして窓際へと大股で歩き、外を見つめる。そうして彼女は敷地に入って来るはずの馬車を待ち続け――

「はあ!? なんなの!?」

 ――1時間、2時間、3時間、4時間、5時間が経過。舌打ちを繰り返しながら窓の外を睨み続けたものの、結局夜の9時になっても望む出来事は発生しませんでした。

「今までこんなことは一度もなかった!? ふざけてる!! 何が起きてるのよ!?」

 感情を爆発させますが、いくら叫んでも答えが聞こえてくることはなく――いくら考えても、答えを見つけることはできませんでした。

「…………あのニュースが飛び込んでこないと、次のアレは起きないはず……。でもアレは、確実に発生するようになっているはず……。………………ニュースがなくてもいい、ということ、なのよね……? ま、まあいいわ。明日、あの場所に行ってみましょう」

 部屋の主は困惑しながらもクイーンサイズのベッドに入り、怒りを鎮めながらまぶたを閉じる。そうして彼女は眠りの世界に落ちてゆき、午前6時半過ぎに起床。豪華な朝食を摂ると身支度を整え、馬車に乗り込みました。

「発進しなさい」
「御意!」

 彼女を乗せた車は彼女に指示で動き出し、燦燦と輝く太陽の下を8時間ほど移動し、『サロットロール湖』という名の湖に着きました。

「お嬢様、到着いたしました」
「そう」((…………現在の時刻は、午後3時52分。ちょうどね))

 懐中時計を確認して馬車を降り、4人の護衛を連れて北方向へと移動。やがて彼女は大きな木の前で止まり、再び懐中時計を手に取りました。

((午後4時にこの場所に居たら、あの方がいらっしゃるはず。……もうすぐね))

 4時まで、残り12秒。念のため・・・・時計は仕舞って心の中でカウントダウンを行い、ぴったり0になると――

「………………どう……なってるの……!?」

 ――なにも、起きない。
 懐中時計がズレていると考えてそのまま待ってみたものの、30分経っても1時間経っても目的の人間は現れなかったのでした。


((…………あり、えない。ありえないわ……。なんでっ、あたしのもとにいらっしゃらないのっ!? ベルナール様ぁ!!))


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました

きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。

透明な貴方

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。  私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。  ククルス公爵家の一人娘。  父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。  複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。 (カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

処理中です...