悪役令嬢だったわたしは

柚木ゆず

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第4話 1週間~発見と発見~ ジョゼット視点

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「え!? あのヴァイオリンを手放されるのですか!?」
「はい、そうなんです。お父様と相談し、昨夜決めました」
「確かジョゼット様は、かの有名なレトーロエス工房のヴァイオリンを使用されていましたよね? ……もしよろしければ、名器の中の名器を手放される理由をお教えくださいませんか?」
「ヴァイオリンを弾くのではなくヴァイオリンに弾かされていた。わたしはあの子の良さを、100パーセント引き出せていなかったのですよ」
「そ、そうなのですか……? 何度か聴かせていただきましたが、そのようには感じませんでしたよ……?」
「痛み入ります。あの子の実力はこんなものではなく、もっともっと良い音色を出せるんですよ。その域に達するのは遥か先――何十年も先で、そんなにも長い期間あの子に『我慢』をさせるのは可哀想で申し訳ない。最適な方に弾いてもらえた方がいいですし、多くの方に真の音色を聴いてもいただきたい。そんな思いで、実力のある方にお譲りすることに致しました」
「そう、でしたか。……貴方様がそうなさるように、楽器の持ち主は変わるもの。僕はいずれ、貴方様のお手元に戻ってくると確信しておりますよ」
「ありがとうございます。ベルナール様の御予想がハズレとならないよう、一層精進してまいります」

「そうでしたか。ベルナール様の一番は、『サロットロール湖』」
「5歳の頃初めて父に連れていってもらい、透明な水と透き通る空気に心を奪われてしまったのです。この世のものとは思えないほどに幻想的で、しかしながら優しく包み込まれるような温もりも感じました」
「幻想的で、優しい。心を清めたい時や心を癒したい時に、伺いたくなりますね」
「そうなんですよ。僕はひと際真摯に打ち込む必要がある時は事前に訪れますし、ショックなことがあった際も訪れます。僕にとっては特別な存在、場所です」
「噂には聞いておりましたが、想像以上でした。今とても、気になっております」
「興味を持っていただけて嬉しいですよ。よろしければ次にお会いする際、一緒にいかがですか? 近くにはあの有名な像もありますし、そちらも含めて案内をさせていただきますよ」
「よろしいのですか? 是非、お願い致します」
「喜んで。自分が大好きな場所を知ってもらえるのは嬉しいことですし、今の貴方様でしたら殊更でございます」
「有難いお言葉まで痛み入ります。更に更に、次回が待ち遠しくなりました」

 などなど。あれからベルナール様ととても良い時間を過ごすことができており、日に日に心の距離が縮まっていくのを感じます。

 こんな方と、この先も一緒に居られるなんて。
 わたしは、幸せ者ですね。


 〇〇


「…………なんで……? なんでますますジョゼットと仲良くなっているの……!? ゆる、せない……! 許せない許せない許せない許せない許せない……!!」

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