悪役令嬢だったわたしは

柚木ゆず

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第10話 アリシア・ラズエルア アリシア視点(3)

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 切っ掛けは、偶然だった。
 モニカのせいで激しく転んでしまい、顔面強打で意識を失う寸前のこと。後ろから、こんな声が聞こえてきたのだった。

「……上手くいってください。アリシア様が、元に戻りますように……!!」

 上手くいく? 戻る? 何を?
 分からない。
 分からないけど、コイツが何かを企んで意図的にこうしたのは分かった。だからあたしは――

「なんだか…………とっても大事なことを、忘れてしまっているような気が……。長い間眠っていたような、ヘンな感じも、します……。モニカ様、なにか……ご存じありませんかぁ?」

 記憶が混乱しているフリをして、モニカから欲しい情報を聞き出した。

「!! はいっ! 存じ上げております!! アリシア様はずっとっ、何者かに憑りつかれてしまわれていたのです!」

 モニカを脅迫する際に、転倒して頭を打つ。本来ない出来事が起きたせいで、ジョゼットの言動がおかしくなってしまう――バグが発生。そのせいでモニカはあたしがついた嘘を信じなかった。
 ただ不幸中の幸いジョゼット達はバグを『憑依』と捉えていて、あたしも同様の状態だと勘違。あたしを元に戻すため、三人で協力して今日のコレを引き起こしていたのだった。

((起きるはずのイベントが起きなくなっていたのは、ジョゼットのせいだった。やっぱり、あの時の判断は正解だったのね))

 日に日にベルナール様とジョゼットの仲が良くなっていて、あのまま放置したら取り返しのつかないことになると思った。だから『森にジョゼットが行く』というイベントを利用して追いかけ、その場で殺害してやろうと――ベルナール様の現在の相手を消して、強引にあたしへと軌道修正してやろうと考えていた――。
 登場人物を消していいものかと気になっていたけれど、正解だったみたい。

((あの様子だとジョゼットとの関係は、自然に切れない。自然に切れないなら、この手で切るしかないわね))

 用意しているこのやり方・・・・なら、ベルナール様とモニカがその場にいてもジョゼットを殺せる。ベルナール様に敵意を持たれることはなく、上手く立ち回ればあたしのもとに来てくださるようになる!


((……待ってなさいよ、ジョゼット……! ベルナール様を独占した罰、与えてやるんだから……!!))







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