悪役令嬢だったわたしは

柚木ゆず

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第12話 終わらせてやる アリシア視点(1)

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「お嬢様! あの針はいったい――」
「あたしだけが正しい行動をしているの! あとで説明してあげるから!! 今は黙って命令を聞きなさい!!」
「かっ、畏まりました!! 我々にご指示を!」

 護衛達が大急ぎで追いかけてきて、適当に誤魔化して指示を出す。
 まずはこのまま屋敷に戻って門を閉め、アイツらが入ってこれないようにする。

「…………よし、いいわ! 閉めて頂戴!!」
「はっ!!」

 3人が追いつくまでに正門の扉が閉まり、『絶対に入れるな』と門番に伝えてから今度は馬車へと走る。

「お嬢様!?」
「いかがなさいましたか!?」
「アンタはそこにある馬車を走らせて、敷地から勢いよく飛び出しなさい! そっちのアンタは屋敷の裏に回ってっ、あたしを拾いなさい!」

 最初のはダミー。あたしが乗ってると思い込ませて追いかけさせ、撒く。

「さあ、出なさい!! 馬の限界が来るまであちこち好きなように走り回りなさい!! いいわねっ!?」
「畏まりました!! いってまいります!!」

 これで、アイツらはあたしを尾行できない。
 姿を見られてなければ、絶対に邪魔はされない。

「ここから外に出て…………あたしはここよ! さあ行くわよ!」

 周囲に怪しい人影や馬車がないのを確認して、出発。念のためすぐ目的地を目指さず、一旦関係ない方向に走る。

「どう? ついて来てそうな車は?」
「ございません」
「いいわ。じゃあフェイクはここまで。全速力でサロットロール湖を目指しなさい!」

 あたしの合図で進行方向が180度変わり、茜色に染まる道を進んでいく。

「……お嬢様。質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「針はまだ駄目。針以外に関してなら、いいわよ」
「針ではございません。サロットロール湖に向かわれる理由を教えていただけないでしょか?」
「サロットロール湖。あそこにはね、だい――やっぱりこれもストップ。今は言えないわ」

 コイツらはゲームの中のキャラクター。絶対に知り得ない情報を知ってしまうと、新しいバグが発生してしまう危険性がある。
 念のため誰にも伝えないようにした状態で馬車を走らせ、数時間後、目的地に到着した。

「お嬢様、こちらでございますね?」
「そう、コレが必要なのよ。ここから先はあたしだけで行く。アンタ達はここで留守番してなさい」
「なりません! おひとりはあまりにも危険で――」
「うるさいわね!! 黙って従え!! 着いて来たらクビにするわよ!!」

 同様にバグを警戒して、キャラクター達は連れていかない。あたしはひとりで馬車を降りて駆け足で道を進んでいき、しばらくすると透き通った水が有名な湖――ではなく、高さ2メートル前後はある像が見えてきたのだった。


「ふふ。さあ、この世界を消しましょうか」


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