悪役令嬢だったわたしは

第１２話 終わらせてやる アリシア視点（２）

（（あわわ～、なんということでしょう～。これからあたしはたったひとりで、この世界を崩壊させてしまえるんですよねぇ～））

　この乙女ゲームのタイトルは『神が見守る五人の令嬢』で、目の前にある『神の像』がその神。そんな神には『この世界の創造者で、この像の足元に埋め込まれた水晶を通して神界から力を送りこの世界を維持し続けている』という設定があるのよね。

　――水晶を通して――。

　つまり水晶が壊れたら、この世界は崩壊してしまうのだ。

（（くふふ。設定資料集を買っててよかったわ））

　どの主人公のストーリーでも『神の像』は出てくるものの、像や水晶の秘密は明らかにならない。普通にゲームをプレイしただけでは、仮に全編をトゥルーエンドでクリアしていても知ることはできなかった。
　細かい設定まで考えてくれていた原作スタッフと、その設定を載せようと決めた編集者に感謝だわ。

（（値段が高いのに内容が薄くって、その上ランダム封入のカードはベルナール様じゃなかった。腹が立つ本だと思っていたけど、評価を改めないといけないわね））

　マイナス１００点は訂正。１００点満点の本だわ。

（（……さ、終焉のカウントダウンのスタートよ））

　この世界が消えたらあたしも死ぬ。死ぬのは、嫌。貴族の生活は快適で、そういう意味でもこの人生を歩み続けていたい。
　でもベルナール様と結ばれることはないし、しかも大好きなベルナール様に嫌われてしまった。

　――この世界はまるで拷問――。

　こんなにも辛い思いをし続けるくらいなら、消えた方がマシ。

（（…………ごめんなさい、ベルナール様。あたしは貴方様を間接的に殺してしまいます））

　でもそれは、貴方様に一番の問題があるんです。あたしはなにも悪くない。
　恨まないでくださいね。

（（あたしは転生して、アリシア・ラズエルアになりました。なら貴方様もあたしも、また生まれ変われるはずです。……次こそは、幸せになりましょうね））

　心の中で指切り。画面の中でいつも笑顔を見せてくれていたあのあたしだけのベルナール様とお約束をして、あたしは進んでいく。

（（ふふ。バイバイ、この世界））

　屋敷から持って来ていた金づちを握り締め、素晴らしい像へと近づいていって――

「もうやめましょう」

　――！？
　突然背後から、聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった……。


「…………ジョゼット……！？　な、なぜここに……！？」