32 / 41
第13話 アリシアが知らないところでは ジョゼット視点
しおりを挟む
「…………? ここは……?」
いつの間にかわたしは馬車の中で横たわっており、ベルナール様とモニカ様が不安げに覗き込んでいました。
さっきまでお外でアリシア様と握手をしていたのに。なにがどうなっているんです……!?
「覚えて、いらっしゃらないのですか……?」
「ジョゼット様はアリシア様に――ジョゼット様に毒針? を刺されそうになるもルルトス様の機転で阻止され、アリシア様はジョゼット様を突き飛ばして逃走したのですよ。ルルトス様が受け止められた時にはすでにジョゼット様の意識はなく、今から10分前からこちらで回復を待っておりました」
「…………そういえば……。握手をした時から意識がおぼろげになって、突き飛ばされた瞬間完全に意識が途絶えたのです……。急に、どうしてしまったのでしょうか――…………」
そう、喋っていた時でした。頭の中でカチッという音が聞こえ、様々な景色や声が猛スピードで頭の中に流れ込んできたのでした。
「「???」」
「……分かり、ました……。前世の記憶が、蘇る準備をしていたんです……。わたしはかつて、この世界とは別の世界で生きていたんです!」
帰り道で事故に遭って命を落としてしまった、享年27歳の小学校教諭・水野ひなた。それが、かつてのわたしです。
「……わたしが『わたくし』ではなくなったのは、憑りついていた存在がいなくなったからじゃないんです……。あの衝撃によってゲームのキャラクターであるジョゼット・ハルトーラオの性格が消え、水野ひなただった頃の性格が出てきたからそうなっていたんですよっ!」
ここは生前のわたしが大好きだった乙女ゲーム『神が見守る五人の令嬢』の世界で、わたしも含め全員がゲームのキャラクターであること。わたしの性格が表に出た影響でわたしが関わった人達に自我が芽生え、大勢が本来あり得ない行動を取り続けたことによって『アリシア編』にはないストーリーが進んでいること。
そして――。
アリシア様もまた転生者で、恐らくはとっくに前世の記憶が蘇っていたこと。
それらを、お二人の手を握りしめながらお伝えしました。
「……僕達が、ゲーム――創作物の登場人物……」
「そんな……。何かの間違い、ではありませんか……?」
「ベルナール様、モニカ様、わたしジョゼット、アリシア様も。今見ているお姿、今聞いているお声、まったく同じ身分でゲームに登場しましたし、ゲーム内で発生した出来事はすべて発生しています。ここは紛れもなく、ゲームの世界です」
転生者同士が接触した際に、何かしらが作用したのでしょう。握手と突き飛ばしのおかげで、前世の記憶が全部ハッキリと蘇りました。
アリシア編はあちらのストーリーに比べると読み込みは浅いかもしれませんが、それでもトゥルーエンドまで開放した。内容は隅々まで覚えています。
「……………………」
「……………………」
「わたしもすでにこの世界の住人、同じ気持ちを抱いております。ですが驚いている暇はないんです。アリシア様は、この世界を崩壊させようとしているんですよ」
あの反応。あの方は全てを抹消しようと考えているに違いない。
アリシア様も設定資料集を持っていて、あの設定を知っています。
「詳しいお話は移動しながら致します! サロットロール湖を目指しましょう!」
追跡は撒かれてしまっているでしょうし、すでに10分経ってしまっています――どこにいるか分からなくなってしまっています。アリシア様と接触するにはゴール地点に行くのが一番で、わたし達3人は大急ぎで目的地を目指したのでした。
いつの間にかわたしは馬車の中で横たわっており、ベルナール様とモニカ様が不安げに覗き込んでいました。
さっきまでお外でアリシア様と握手をしていたのに。なにがどうなっているんです……!?
「覚えて、いらっしゃらないのですか……?」
「ジョゼット様はアリシア様に――ジョゼット様に毒針? を刺されそうになるもルルトス様の機転で阻止され、アリシア様はジョゼット様を突き飛ばして逃走したのですよ。ルルトス様が受け止められた時にはすでにジョゼット様の意識はなく、今から10分前からこちらで回復を待っておりました」
「…………そういえば……。握手をした時から意識がおぼろげになって、突き飛ばされた瞬間完全に意識が途絶えたのです……。急に、どうしてしまったのでしょうか――…………」
そう、喋っていた時でした。頭の中でカチッという音が聞こえ、様々な景色や声が猛スピードで頭の中に流れ込んできたのでした。
「「???」」
「……分かり、ました……。前世の記憶が、蘇る準備をしていたんです……。わたしはかつて、この世界とは別の世界で生きていたんです!」
帰り道で事故に遭って命を落としてしまった、享年27歳の小学校教諭・水野ひなた。それが、かつてのわたしです。
「……わたしが『わたくし』ではなくなったのは、憑りついていた存在がいなくなったからじゃないんです……。あの衝撃によってゲームのキャラクターであるジョゼット・ハルトーラオの性格が消え、水野ひなただった頃の性格が出てきたからそうなっていたんですよっ!」
ここは生前のわたしが大好きだった乙女ゲーム『神が見守る五人の令嬢』の世界で、わたしも含め全員がゲームのキャラクターであること。わたしの性格が表に出た影響でわたしが関わった人達に自我が芽生え、大勢が本来あり得ない行動を取り続けたことによって『アリシア編』にはないストーリーが進んでいること。
そして――。
アリシア様もまた転生者で、恐らくはとっくに前世の記憶が蘇っていたこと。
それらを、お二人の手を握りしめながらお伝えしました。
「……僕達が、ゲーム――創作物の登場人物……」
「そんな……。何かの間違い、ではありませんか……?」
「ベルナール様、モニカ様、わたしジョゼット、アリシア様も。今見ているお姿、今聞いているお声、まったく同じ身分でゲームに登場しましたし、ゲーム内で発生した出来事はすべて発生しています。ここは紛れもなく、ゲームの世界です」
転生者同士が接触した際に、何かしらが作用したのでしょう。握手と突き飛ばしのおかげで、前世の記憶が全部ハッキリと蘇りました。
アリシア編はあちらのストーリーに比べると読み込みは浅いかもしれませんが、それでもトゥルーエンドまで開放した。内容は隅々まで覚えています。
「……………………」
「……………………」
「わたしもすでにこの世界の住人、同じ気持ちを抱いております。ですが驚いている暇はないんです。アリシア様は、この世界を崩壊させようとしているんですよ」
あの反応。あの方は全てを抹消しようと考えているに違いない。
アリシア様も設定資料集を持っていて、あの設定を知っています。
「詳しいお話は移動しながら致します! サロットロール湖を目指しましょう!」
追跡は撒かれてしまっているでしょうし、すでに10分経ってしまっています――どこにいるか分からなくなってしまっています。アリシア様と接触するにはゴール地点に行くのが一番で、わたし達3人は大急ぎで目的地を目指したのでした。
21
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました
きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。
透明な貴方
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。
私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。
ククルス公爵家の一人娘。
父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。
複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。
(カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる