42 / 42
エピローグその2 佐倉美月としての、新しい第一歩
しおりを挟む
「今日はまず、皆さんに転校生を紹介します」
9月2日、月曜日。夏休みが終わって、初めての学校の日。
教壇に立った先生がそう言うと、教室中はざわざわし始めました。
「転校生? へ~、こんな時期に珍しいね」
「男の子かな? 女の子かな?」
「どんな人なんだろ?」
転校生は、もちろん翔くん。
『美月さん。美月さんと同じ中学校に入ることは分かっていたのですが、今日同じクラスになると決まりました』
しばらく前に聞いていたことを思い出していると、ガラガラガラ。教室の扉を開けて翔くんが入って来て、先生の隣に立ちました。
「わっ、カッコいい!」
「ね!!」
「クールで格好いい……!」
「落ち着いた雰囲気、良いよね……!」
「こらこら。気持ちは分かるが、少し静かにしなさい。騒がしいと自己紹介ができないでしょう?」
「「「「「はーい」」」」」
先生が注意をすると教室のなかは静かになって、翔くんの自己紹介が始まりました。
「千葉県から越してきました、田宮翔と申します。短い間ではありますが、よろしくお願いいたします」
わたししか知っている人がいない場所でも、しっかりしている翔くん。そんな翔くんがお辞儀をすると全員で拍手をして、
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
先生の合図で、みんなで挨拶をお返しします。
――よろしくお願いします――。
今まで1回だけ転校生がクラスに入って来ることがあって、その時は心の中でご挨拶をしていました。
でも。
もう、『分かって』いるから。
「よろしくお願いします!」
わたしも。大きな声で、ご挨拶をしたのでした。
「「「「「……。えっ!?」」」」」
「「「「「え!?」」」」」
「さ、佐倉、さん……!?」
「みんな、先生、わたしは声を出せるようになったんです。今まで全然お返事とかができなくて、ごめんなさい。これからよろしくお願いします!」
中学校に入学して、3年目。わたしは初めて、声を出しました。
翔くん。
視聴者さん。
真鈴さん。
翔くんのお父さん。
翔くんのお母さん。
お父さん。
お母さん。
ありがとうございます。
わたしは昨日だけじゃなくて、今日も――
笑顔で、新しい一歩を踏み出すことができました!
9月2日、月曜日。夏休みが終わって、初めての学校の日。
教壇に立った先生がそう言うと、教室中はざわざわし始めました。
「転校生? へ~、こんな時期に珍しいね」
「男の子かな? 女の子かな?」
「どんな人なんだろ?」
転校生は、もちろん翔くん。
『美月さん。美月さんと同じ中学校に入ることは分かっていたのですが、今日同じクラスになると決まりました』
しばらく前に聞いていたことを思い出していると、ガラガラガラ。教室の扉を開けて翔くんが入って来て、先生の隣に立ちました。
「わっ、カッコいい!」
「ね!!」
「クールで格好いい……!」
「落ち着いた雰囲気、良いよね……!」
「こらこら。気持ちは分かるが、少し静かにしなさい。騒がしいと自己紹介ができないでしょう?」
「「「「「はーい」」」」」
先生が注意をすると教室のなかは静かになって、翔くんの自己紹介が始まりました。
「千葉県から越してきました、田宮翔と申します。短い間ではありますが、よろしくお願いいたします」
わたししか知っている人がいない場所でも、しっかりしている翔くん。そんな翔くんがお辞儀をすると全員で拍手をして、
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
先生の合図で、みんなで挨拶をお返しします。
――よろしくお願いします――。
今まで1回だけ転校生がクラスに入って来ることがあって、その時は心の中でご挨拶をしていました。
でも。
もう、『分かって』いるから。
「よろしくお願いします!」
わたしも。大きな声で、ご挨拶をしたのでした。
「「「「「……。えっ!?」」」」」
「「「「「え!?」」」」」
「さ、佐倉、さん……!?」
「みんな、先生、わたしは声を出せるようになったんです。今まで全然お返事とかができなくて、ごめんなさい。これからよろしくお願いします!」
中学校に入学して、3年目。わたしは初めて、声を出しました。
翔くん。
視聴者さん。
真鈴さん。
翔くんのお父さん。
翔くんのお母さん。
お父さん。
お母さん。
ありがとうございます。
わたしは昨日だけじゃなくて、今日も――
笑顔で、新しい一歩を踏み出すことができました!
3
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
見える私と聞こえる転校生
柚木ゆず
児童書・童話
「この中に、幽霊が見える人はいませんか?」
幽霊が見える中学1年生の少女・市川真鈴のクラスに転校生としてやって来た、水前寺良平。彼のそんな一言が切っ掛けとなり、真鈴は良平と共に人助けならぬ幽霊助けをすることになるのでした――。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる