VTuberデビュー! ~自分の声が苦手だったわたしが、VTuberになることになりました~ 

柚木ゆず

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第15話 おめでとうパーティーと、あの約束(2)

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「質問? どうぞっ。なにかな?」
「今後の目標がありましたら、教えてください」

 あっ、そういうことかぁっ。
 次の目標。実はもう決まってます。

「まず。葉月ミアとしての目標は、『お顔公開配信』を成功させる、です」

 まだミアはポンポンでお顔を隠していて、お顔が分からない。
 葉月ミアだけど葉月ミアってちゃんと言えない状態だから、真の葉月ミアにならないといけなくって。本当の姿をみなさんにお見せすることが、次の目標です。

「きっと、ううん、絶対にそう。翔くん――如月タミ先生のデザインだから、お顔を出したらすっごく注目される。一気に視聴者さんが増えると思う。そんな中でいつも通りの配信をして、見てくれた人みんなに楽しんでもらって、本当の『葉月ミア』としての一歩をしっかりと踏み出す。それが、次のミアの目標です!」

 Vtuberになると決めてから一か月くらい。まだまだ日は短いけどミアのおかげで色々なことがあったから、すっかりわたしにとってVtuber活動は『人生』の一部になってる。
 なので新しい一歩目は本当の本当に大事で、これが次の、大きな目標なんです。

「お顔の発表は夏休み最終日――8日後の9月1日に決めてて、その日は特に大事な日ですっ。一生懸命頑張りますから、みなさん、見ていてくださいっ」
「もちろんです」
「「「「はいっ」」」」
「ありがとうございますっ。では、次です。佐倉美月としての次の目標は、『外で声を出す』です」


『一緒にスーパーに行く時とかに、少しずつ、喋れるようにしていこうと思うの。道を歩きながらとか買い物をしながらとか、レジの人とかにペコってお辞儀するだけじゃなくって、『ありがとうございます』って言っていこうと思うの』

『最初は緊張すると思うから、お父さんかお母さんだけじゃなくってね、翔くんにもついていってもらって。来週のどこかで、まずはお買い物中に声を出してみようって思う』

『インターネットの世界で変われて、分かったことがあるから。そうしようって、そうしても大丈夫なんだって、気が付いたの。久し振りで急に一気にはできないと思うけど、ちょっとずつでもやっていこうって思ってます。だからね、見ていてください』


 あの時言っていた、声を出すためのお買い物。お母さんの都合と翔くんのお仕事の都合が少し合わなくって、予定がほんの少しだけずれて、明日行うことになってるんです。
 それって、わたしにとってはすごく大きな一歩。
 もう何年もしていないことで、想像しただけで緊張しちゃう。けど。『分かったこと』があるから。
 Vtuberの世界だけじゃなくて現実の世界でも、飛び込んでみます!

「翔くんのおかげでそうしてみよう、そうしてみたいって思えるようになって、いよいよ明日、やってみます。翔くん、お母さん、よろしくお願いしますっ。お父さん、翔くんのお父さん、お母さん。見守っていてくださいっ」
「はい。よろしくお願いします、美月さん」
「ええ、美月」
「会社から応援しているよ」
「僕も、職場から応援しています」
「ここから見守っていますね」
「ありがとうございますっ! こっちも、頑張ります!」

 コクっと頷いて、胸の前で両手をぎゅっと握る。
 改めて気合を入れて、これで『1000人突破おめでとうパーティー』はお仕舞。わたしが心がポカポカしたままお家に戻って、お風呂に入って、眠る。
 そうして、ついにっ。
 次の日、『本番』の日がやってきて――

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