VTuberデビュー! ~自分の声が苦手だったわたしが、VTuberになることになりました~ 

柚木ゆず

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第21話 起きたら

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((………………………………。そっか。夢を見てたんだ……))

 気が付いたらわたしは、顔が涙だらけになってベッドで寝ていた。
 あれは、夢。
 最近見てなかったけど……。あの時みたいに――ううん……。あの時以上に、はっきりとしてた。
 みんなの声が怖いくらいにしっかり聞こえたし、あの時の心のズキンとする痛みもしっかり感じた……。

((………………………………あの時のことがあったから、見ちゃったんだよね))

『あの時の、変な声のお姉ちゃん!』

 4年ぶりに、言われたのを聞いた。
 だから、なんだよね。

((………………………………ハッキリあの時を思い出しちゃって、嫌だった。けど、大丈夫))

 わたしはもう、分かってるから。知ってるから。
 あの時のそのあとみたいに、ず~っと落ち込むことはないのです!

((………………………………だから、わたしはいいんだけど……。あの女の子に、かわいそうなことをしちゃったなぁ))

『こっ、こら! 乃愛!! なにを言っているの!! す、すみませんっ!』
『……………………い、いえいえ。だいじょうぶ、ですよー』
『本当に、申し訳ございません。……乃愛、貴方って子はまた……! 嫌な気持ちにさせることは言っちゃダメって、一昨日言ったでしょ!?』
『だって……』
『だってじゃない! ……乃愛、ちょっとこっちに来なさい。お話があります。ダメよ、『嫌』じゃないの。いいから来なさい』

 あのくらいの子は、つい思ったことを言っちゃうんだよね。
 むかし同じクラスだった子たちや先生たちとは、違う。
 だからすぐに笑って返せればよかったんだけど、戸惑っちゃって……。怒られることになっちゃったから、申し訳ないです。

((もし次お会いすることがあったら、フォローできたらいいな))

 そんなことを考えながらベッドを降りてパジャマを脱いで、お洋服をきて、一階に降りる。
 今は7時10分。まだお父さんもいるはずだから、朝のご挨拶をしましょうっ!

「あら、おはよう――っ。どうしたの!?」
「目が真っ赤じゃないかっ。どうしたんだいっ!?」
「………………………………………………………………」
「美月……?」
「美月……?」
「………………………………………………………………」

 ダメ。
 何回やっても、ダメだった。
 朝のご挨拶をしたいのに。変な夢を見ちゃっただけって、言いたいのに。



 声が、出ない。

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