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第7話 アドリブは不得意だった男の末路・上 フェルナン視点(3)

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「ちっ、違う! そんな話は知らないぞ! なんとか茸なんて関係がない! 俺は純粋な気持ちで復縁を申し込んでいたんだ! ジュリーに騙されたと知ったから関係を戻したいと思っていたんだ!」

 まだまだまだっ、諦めるのは早い! 無実になるチャンスはどこかにあるはずだ!
 俺はそれを信じ、必死に言い訳をしながら希望を見つけることにした!

「そもそもだ! 俺は父上に会っていないんだぞ!? 俺に大ニュースを伝えるために来ていたらしいが、おそらくすれ違っているんだ!」
「「「「「………………」」」」」
「治安局員の皆様っ、会っていないのにどうやって『アレーナ茸』を知れる!? 知れるはずがないだろう!?」

 大喜びで報告しに来たということは、俺は知らないことの証明になる!
 なにもおかしい部分はない!

「何度も言っているようにっ、破棄の撤回とその点は関係はない! そもそもジュリーの言い分だって嘘で! どっちもっ、嘘をついているんだ!!」
「では、一点質問をさせていただきましょうか。……フェルナン殿。貴方は間違いなく、お父上と会ってはいないのですね?」
「ああもちろんだ!」

 俺達が話したのは、人気(ひとけ)のない中庭だ。
 その姿を見ている者はジュリー以外いなくて、目撃者がアイツだけならどうとでも誤魔化せる。

「父上があんなことを言い出すなんて、意味が分からない。どうかしている。もしかしてなにか薬でも使ったんじゃないだろうな? 父上の証言は、明らかにおかしい――」
「おかしいのは、貴方の台詞ですよ。貴方がたは確かに、会っていますよね?」
「だから会っていないと言っているだろう! お前は見てもいないのにっ、どうしてそこまでしつこく疑うんだ!?」
「その理由は、目撃者がいるからですよ。貴方へと駆け寄る当主の姿を見た方が、6名もね」

 しまった……。忘れていた……。
 俺達はジュリーを馬車に送っている最中に会って、それから場所を移したんだった……。

「口を挟むのはマナー違反と承知で、挟ませていただきますね。先の言い訳と今の言い分。フェルナン様は在籍時からとても優秀でしたが、不慮の出来事――アドリブは、驚くほどに不得意なのですね」
「ジョエル黙れ!! バカにしやがって!! 減らず口を叩けないようにしてや――ぐあっ!?」

 不愉快な口を殴って黙らせようとしたら、治安局員によって腕を捻り上げられてしまった!

「貴方が向かう先はそちらではなく、我々の馬車、そして治安局です。円滑なご同行は見込めないと判断し、これより強制連行を行います」
「やめろ! 離せ! 違うと言っているだろう!! 俺は無実なんだ!! 俺は何一つ企んでいないっ、善良な貴族だあああああああああああああああああああああ!!」

 そう主張しても、駄目だった……。
 なにを言っても、聞き入れられることはなく……。
 手錠をかけられて、馬車に放り込まれて――









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