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第4話 新しいこと ミシュリーヌ視点
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「……竜神様……。このような場所をいただいて、本当に構わないのでしょうか……」
竜神様に導かれてお部屋に入ったわたしは、おもわず声を震わせていました。
なぜかというと――
天蓋付きのキングサイズの豪華なベッド。キラキラと輝く綺麗なシャンデリア。赤色のお洒落な絨毯。わたしの国でいう無垢にそっくりな素材で作られたデスク。
などなど。
まるで王族の方々が使用されるような家具寝具が、これまでの自室の3倍はある空間に設置されていたからです。
「さっき言ったように、君はこちらの都合で環境を変えられてしまったのだ。少しでも快適に過ごせるよう、できる限り質の良いものを集めた。ミシュリーヌさえよければ、好きなように使って欲しい」
「あ、ありがとうございます。し、使用させていただきます」
「足りないもの、自分に合わないと感じたものがあれば、なんでも言ってもらいたい。すぐに対応しよう」
室内をぐるっと見回した竜神様はそう仰られて、言い終わるや廊下を一瞥されました。そうすると――そちらの方向から、片方の袖だけが短い不思議なメイド服を纏った、赤色の髪を腰まで伸ばした美しい女性がいらっしゃりました。
「彼女はオデット、今日から君の身の回りの世話と外出時の護衛を務める者だ。……できることならあちらでの侍女を招待したいところなのだが、あちらの人間は100年に1人しか生きたまま移動できないのだ。すまない」
「いえ、お気になさらないでください。わたしは充分幸せでございます」
竜神様のご厚意で、1か月に1度はローナに会えるそう。
もう二度と会えないと思っていた人と、また会える。話すことも抱き締めることもできる。
こんなにも嬉しいことはありません。
「そうか。では次は、ここ以外の場所を――城の内部を案内しよう。着いて来てくれ」
「はい。お願い致します」
広々とした浴場や豪華絢爛な食堂、思わず見惚れてしまう美しい中庭。たくさんの本が並ぶ書庫や、ビリヤードやテーブルゲームを楽しめる遊技場など。
そのあとも竜神様が直々に案内をしてくださり、そちらが終わると――
「いい時間だな、夕食にしよう。ミシュリーヌ、今は肉と魚どちらの気分だ?」
「え? お、お魚、です」
「分かった。なら今夜は、魚のメニューにしよう」
カルパッチョやグラタン、ふかふかのバターロールや新鮮なお野菜のサラダ、ティラミスなどの美味しい――いつもは両親と姉が食べていたもの、それよりも遥かに豪華なお料理をいただき、
「この世界の食事はどうだ? 口に合ったかな?」
「とても、美味しかったですっ。こんなにも美味しいものをいただいたのは、大げさではなく生まれて初めてですっ」
おもわず声が弾んでしまう幸福な時間を過ごしたわたしは、しばらく竜神様とお喋りをさせていただいたあと、浴場で一日の汗を流して大きな大きなお部屋――わたしのお部屋に戻ってきたのでした。
そして――
竜神様に導かれてお部屋に入ったわたしは、おもわず声を震わせていました。
なぜかというと――
天蓋付きのキングサイズの豪華なベッド。キラキラと輝く綺麗なシャンデリア。赤色のお洒落な絨毯。わたしの国でいう無垢にそっくりな素材で作られたデスク。
などなど。
まるで王族の方々が使用されるような家具寝具が、これまでの自室の3倍はある空間に設置されていたからです。
「さっき言ったように、君はこちらの都合で環境を変えられてしまったのだ。少しでも快適に過ごせるよう、できる限り質の良いものを集めた。ミシュリーヌさえよければ、好きなように使って欲しい」
「あ、ありがとうございます。し、使用させていただきます」
「足りないもの、自分に合わないと感じたものがあれば、なんでも言ってもらいたい。すぐに対応しよう」
室内をぐるっと見回した竜神様はそう仰られて、言い終わるや廊下を一瞥されました。そうすると――そちらの方向から、片方の袖だけが短い不思議なメイド服を纏った、赤色の髪を腰まで伸ばした美しい女性がいらっしゃりました。
「彼女はオデット、今日から君の身の回りの世話と外出時の護衛を務める者だ。……できることならあちらでの侍女を招待したいところなのだが、あちらの人間は100年に1人しか生きたまま移動できないのだ。すまない」
「いえ、お気になさらないでください。わたしは充分幸せでございます」
竜神様のご厚意で、1か月に1度はローナに会えるそう。
もう二度と会えないと思っていた人と、また会える。話すことも抱き締めることもできる。
こんなにも嬉しいことはありません。
「そうか。では次は、ここ以外の場所を――城の内部を案内しよう。着いて来てくれ」
「はい。お願い致します」
広々とした浴場や豪華絢爛な食堂、思わず見惚れてしまう美しい中庭。たくさんの本が並ぶ書庫や、ビリヤードやテーブルゲームを楽しめる遊技場など。
そのあとも竜神様が直々に案内をしてくださり、そちらが終わると――
「いい時間だな、夕食にしよう。ミシュリーヌ、今は肉と魚どちらの気分だ?」
「え? お、お魚、です」
「分かった。なら今夜は、魚のメニューにしよう」
カルパッチョやグラタン、ふかふかのバターロールや新鮮なお野菜のサラダ、ティラミスなどの美味しい――いつもは両親と姉が食べていたもの、それよりも遥かに豪華なお料理をいただき、
「この世界の食事はどうだ? 口に合ったかな?」
「とても、美味しかったですっ。こんなにも美味しいものをいただいたのは、大げさではなく生まれて初めてですっ」
おもわず声が弾んでしまう幸福な時間を過ごしたわたしは、しばらく竜神様とお喋りをさせていただいたあと、浴場で一日の汗を流して大きな大きなお部屋――わたしのお部屋に戻ってきたのでした。
そして――
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