姉の代わりに竜神様の生贄になりました~そんなわたしを待っていたのは、溺愛でした~

柚木ゆず

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第16話 それは、分水嶺 俯瞰視点(4)

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(お父様お母様っ、アナタたちもよ! 注目っ、注目!)
(?)(?)(?)(?)(?)
(ここから脱出できる方法を思い付きましたのっ! わたくしに協力してっ!!)

 これから自分があのナイフを拾うから、同時に全員で竜神を抑えつけて。そうしておけば神相手でも一瞬隙が出来るから、その間に自分が刺して殺す。
 竜神の様子を確認しつつ、早口で指示を出しました。

(なんという観察眼だ……! すごいぞサンドラ!)
(よく気付いたわねっ! ありがとうサンドラっ!)
(流石でございますお嬢様……!!)

 サンドラ以外の12人もサンドラと同類で、自分のためなら平気で誰かを殺せる人間。全員が満面の笑みと喝采を返しました。

(もちろんやるともっ! ぜひやらせてくれ!!)
(みんなで力を合わせて自由を勝ち取りましょうっ!)
(ええお母様っ。さあ、始めますわよ!!)

 起きてしまう前に、殺る。13人は細心の注意を払って足音を殺しながら近づき、

((…………よし。拾えたつ))

 サンドラが慎重にナイフを拾い上げ、

《今ですわっ!》
《《《》》》

 目線で会話を行い、右腕左腕右脚左脚に、それぞれ3人がかりで掻き付きます。

「なっ!? 貴様らなにをす――」
「もう遅いですわよ!! お前こそっ、罰を受けろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 迷いも罪の意識も、一切なし。サンドラは勢いよく飛び掛かり――

「が、が、ぁ…………」

 ――背中側から心臓を突き刺し、竜神は血を流しながら倒れました。

「上手くいきましたわっ! あとはっ!」
「分かっている! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 致命傷ではない可能性を考慮し、球で入念に轢く。100キロ以上ある球をなんと20往復もさせ、念のためもう数か所竜神製のナイフで急所を刺し、ようやくサンドラが袋を拾い上げました。

「はあ、はあ、はあ。ここまでやったら、確実に死にましたわっ! お父様お母様アナタたちも、ココから出ましょうっ。出てっ、次はミシュリーヌとローナを殺しますわよ!!」

 自分達を苦しめた罰を与える。サンドラは――サンドラは喜びと怒りを露わにしながら扉へと走り、鍵を差し込んで扉を開けます。
 そうして一斉に、開いた扉を潜り――

「「「「「「………………」」」」」

 潜ったその先で、サンドラ達は言葉を失ってしまいます。
 なぜならば、扉の先には真っ白な空間が広がっていて――


「流石はゴミ共。思った通りの行動を取るんだな」


 ――そこで、さっき殺したはずの竜神が立っていたからです。
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