こちら、あやかし村おこし支援課

柚木ゆず

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第1話 謎が多い面接(3)

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「……………………」
「驚かせてしまい申し訳ございません。説明をさせていただきますね」

 まるで、人が脱いだあとの着ぐるみ。有り得ない形状で床に倒れている鈴木さんを凝視していると、安倍さんが苦笑いを浮かべながら近づいてきた。

「そのためには、こちらを所持している必要があります。首にかけてもらえますか」
「わ、分かりました」

 水色の勾玉に紐を通したペンダント。こちらを受け取り、指示に従い首にかけた。

「この状態で僕と波長を合わせば、理解していただけるようになります。お手を取っても構いませんか?」
「は、はい。どうぞ」
「ありがとうございます。失礼致します」

 少しひんやりとした、すべすべとした手。そんな手がわたしの右手をそっと包むと、胸の奥が一瞬だけカッと熱くなった。

「今のは……?」
「これが、僕と波長を合った合図です。10秒もすれば、新たな景色が見えるはずですよ」
((新たな景色……?))

 新しい疑問を覚えながら、安倍さんが差し出してくださった時計を見つめる。
 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。安倍さんが仰っていた時間になると――

「俺の声が聞こえるかい?」

 ――………………。
 しぼんだ鈴木さんの傍に、身長180センチくらいの『一つ目』の男性が現れたのでした。

「聞こえます。失礼ですがどちら様でしょうか?」

 22歳の人生で新たな発見。人間は驚き過ぎると逆に驚かなくなってしまうみたいで、顔のど真ん中に大きな目がついている不思議な男性? を見つめた。

「俺は鈴木心太という名前の人間になっていた、ええと、あれだ。お前達人間が、『あやかし』と呼んでいる存在だよ」
「水前寺さん。あやかし、という言葉はご存じですか?」
「は、はい。知っています」

 怪異の総称。人知を超えた存在だと、なにかで読んだ覚えがある。

「目の前にいる彼が、まさにそのあやかしなんですよ。ちなみにあやかしとしての名前は『心問答(しんもんどう)』で、自身の問いかけに答えた人間の心を見通せる――本音なのか嘘なのかを、見破れる力を持っています」
「……もしかして。さっき、一点もと言っていたのは」
「はい。彼の力を用いて、僕達が求めている人か否かを見極めていました」

 やっぱり。そういうことだったんだ。

「悪いなお嬢ちゃん。この『ガワ』の中から、確かめさせてもらった」
「ガワ……?」
「あやかしは本来『霊感』など特別な力を持つ者しか存在を認識できませんし、そういった人達にしか干渉――触るなどすることができないんですよ。そこでウチの一族が人間を模した『器』を用意して、鈴木心太という名の、もう一人の面接官となっていたんです」

 そこでしぼんでいる身体は、人間とまったく同じ物体だけど人間じゃない。それこそ着ぐるみで、安倍さんは『器』の中にあやかしを出し入れできるそう。

「あやかしがガワを被り、人間を名乗って面接してるんだ。どうなってるんだ? って、嬢ちゃんは思ってるんだろ?」
「そ、そうですね。思ってます」

 しかもそんな人がいるのは県庁で、あやかしとあやかしを人間に擬態? させられる安倍さんが人を探していた。
 なんの、ため……?

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