私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず

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第17話 さようなら マリエット視点(2)

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「我々の子である方が、マリエット・リュシアである方が、何かと都合が良いと思いますぞ? ロールド様、そうは思いませぬか?」
「いえ、そうは思いませんね。……まったく、実に愚かな生き物たちだ」

 ニヤニヤとした目線を向けられた、トリスタン様。彼は即座に否定し、大きく呆れの息を吐いた。

「『平民は人ではない』『我々は特別だ』。そう言わんとする姿や自惚れなどなど、不愉快な点が多々あるが――。それはさておき、平民籍は何の悪影響もありはしない」

 今一度嘆息したトリスタン様は、私を一瞥。温かい目で見てくださった。

「確かに今でも、多くの者が身分で人を判断している。肩書を重要視している。だがかつて生徒会長に選ばれたように、確実に、実力社会の要素を含みつつある。故に実力さえあれば、文句は出ない。文句を出されても、マリエットならば黙らせることが出来るのだよ」
「「「っっ」」」
「幸いにも彼女にはいくつもの『実績』があり、それも手伝い、父上と母上と祖父母、他貴族からも、すでに太鼓判を得ている。……残念だったな、醜き私欲の権化どもよ」
「「「っっ。っっ。っっっ……!」」」

 言い返したいけれど、数々の上流貴族の名が出ていて言い返せる材料がない。そのため3人は顔を理不尽な怒りで真っ赤にしたまま歯がみをして、ただただ、私達を睨みつけてくる。

「さてマリエット、お話は済んだしそろそろ行こうか。君の新たな家に」
「はい、トリスタン様。お世話になります」

 おじい様とおばあ様はいつも一緒だから、引っ越しの荷物は何もない。#侍女キトリー__#大切な味方__#以外は、全て置いていく。

「ドミニクお父様。ノエラお母様。ミレーヌ。今まで、お世話になりました・・・・・・・・・
「僕からも、お礼を言わせていただきましょうか。皆さん、マリエットを大事に育ててくださり、ありがとうございます。後日しっかりと、そのお礼をさせてもらいますね」
「っ。何を企んでいる……!?」「なにをするつもりなの……!?」「何を考えているんですの……!?」
「さあ、なんだろうね。……ヒントは、大切な人を傷つけられてずっと怒っていた、という事。楽しみにしているんだな」

 ニコニコとしていた目が途端に冷たくなり、それに射貫かれた3人は脱力してソファーにへたり込む。私はそんな元家族の姿を見ながら、


「さようなら」


 永遠の別れを告げて、リュシア邸を去ったのだった――。

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