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エピローグ 1年後
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「おじい様、おばあ様。あの日から、ちょうど1年ですね。……あの日届けてくださった言葉のおかげで、様々なことが変わりました」
全てが始まった日から、1年後。季節が一巡りして再びやって来た、おじい様とおばあ様の命日。私はお二人のお墓の前で、微笑みを浮かべていた。
「前回は家に心配事があったので、表情がぎこちなかったと思います。でも今は、そういったものはなにもありませんから。こうやって、笑うことができます」
これが、変化その1。
おじい様とおばあ様はずっと見守ってくれているので、ご存じだと思うけど――。改めてご報告をしたいから、残りの2つも伝えさせてもらいます。
「おじい様おばあ様。去年ここを訪れた際は、大切な侍女と一緒でしたよね。今年は、2人じゃないんです。もう1人、素敵な方が一緒です」
「紹介にあずかりました、マリエットの夫トリスタンです。……最愛の妻はあなた方のおかげで、絶望から抜け出す事ができました。改めて、感謝致します」
隣にいらっしゃったトリスタン様は、片膝をついて深く頭を下げる。おじい様とおばあ様に対してこの国で最上位となる礼を行ってくださり、立ち上がるとそっと、私の手を握ってくださった。
「現在、今後も、彼女の心も体も守ってゆきます。……愛する人の涙など、見たくもありませんからね。一生涯、違えはしません」
「…………おじい様おばあ様。私はトリスタン様と、とある約束しているんですよ」
私もその手を、握り返しながら。変化その3を、お伝えすることにした。
「『悩みができたら、私は必ず打ち明ける』『その悩みを聞いたら、トリスタン様は必ず解決する』。こういった約束を、してくださっているんです」
もう二度と、私が独りで苦しまないように――。あらゆることに対処できる環境を、作ってくださっているんですよ。
なのであれから、一度も悩んだことはありません。
ずっとこうしていたい。そう思える毎日を、過ごせています。
「ですので来年は更に良いご報告をできて、再来年は更に上。いずれは1日では伝え切れないくらいになると思いますので、楽しみにしていてくださいね」
私は確信している未来を告げ、石に刻まれている2つの名前に向けてくすりと笑い。そうしたら――
「うん。楽しみにしているよ、マリー」
「よかったねえ。マリー」
あの日のように。おじい様とおばあ様の声が、聞こえてきました。
「…………マリエット。お二人も、喜んでくださっているようだね」
「トリスタン様。トリスタン様にも」
「ああ、しっかりと聞こえたよ。おじい様とおばあ様のお声が」
トリスタン様は自分の右耳にそっと触れて、その横にある目尻が柔らかく下がる。
「そして僕にはもう一つ届いていて、『大切な孫をよろしくお願いします』と仰られていたんだ。だから、そちらに応えるために、お二人の前で改めて誓うよ」
柔らかく下がっていた目尻が元の位置に戻り、優しさと真剣さを含んだものへと変わる。そして、流麗な動作で私の右手を取って――
「愛しのマリエット。これからも貴方の人生を、幸せで染めてゆきます」
――手の甲にキス。唇と一緒に、想いを伝えてくださった。
「マリエット。貴方の心や体を傷付け兼ねない棘は、僕が全て抜く。だからいつまでも2人で、薔薇の道を歩いてゆこう」
「はい……っ。はいっ、トリスタン様……っ。貴方がいてくださったら、安心して進めます……っ。一緒に、薔薇の道を歩きていきましょう……っ」
瞳を潤ませながら頷き、そんな言葉を聞いたら、そうせずにはいられない。手の甲だけでは、我慢できない。
なので――
「トリスタン様……っ。愛しています」
「僕もだよ、マリエット。愛しています」
――今度は、唇と唇でキス。
おじい様、おばあ様、キトリー。大切な人達に見守られながら私達は、言葉と動作の両方で、最愛の人に想いを伝えあったのでした。
※明日からは、番外編を投稿させていただきます。
ただ……。私事の発生につき、初回のみ30分~1時間ほど遅れてしまう可能性がありまして。もしもそうなってしまった場合は、お許しくださいませ。
全てが始まった日から、1年後。季節が一巡りして再びやって来た、おじい様とおばあ様の命日。私はお二人のお墓の前で、微笑みを浮かべていた。
「前回は家に心配事があったので、表情がぎこちなかったと思います。でも今は、そういったものはなにもありませんから。こうやって、笑うことができます」
これが、変化その1。
おじい様とおばあ様はずっと見守ってくれているので、ご存じだと思うけど――。改めてご報告をしたいから、残りの2つも伝えさせてもらいます。
「おじい様おばあ様。去年ここを訪れた際は、大切な侍女と一緒でしたよね。今年は、2人じゃないんです。もう1人、素敵な方が一緒です」
「紹介にあずかりました、マリエットの夫トリスタンです。……最愛の妻はあなた方のおかげで、絶望から抜け出す事ができました。改めて、感謝致します」
隣にいらっしゃったトリスタン様は、片膝をついて深く頭を下げる。おじい様とおばあ様に対してこの国で最上位となる礼を行ってくださり、立ち上がるとそっと、私の手を握ってくださった。
「現在、今後も、彼女の心も体も守ってゆきます。……愛する人の涙など、見たくもありませんからね。一生涯、違えはしません」
「…………おじい様おばあ様。私はトリスタン様と、とある約束しているんですよ」
私もその手を、握り返しながら。変化その3を、お伝えすることにした。
「『悩みができたら、私は必ず打ち明ける』『その悩みを聞いたら、トリスタン様は必ず解決する』。こういった約束を、してくださっているんです」
もう二度と、私が独りで苦しまないように――。あらゆることに対処できる環境を、作ってくださっているんですよ。
なのであれから、一度も悩んだことはありません。
ずっとこうしていたい。そう思える毎日を、過ごせています。
「ですので来年は更に良いご報告をできて、再来年は更に上。いずれは1日では伝え切れないくらいになると思いますので、楽しみにしていてくださいね」
私は確信している未来を告げ、石に刻まれている2つの名前に向けてくすりと笑い。そうしたら――
「うん。楽しみにしているよ、マリー」
「よかったねえ。マリー」
あの日のように。おじい様とおばあ様の声が、聞こえてきました。
「…………マリエット。お二人も、喜んでくださっているようだね」
「トリスタン様。トリスタン様にも」
「ああ、しっかりと聞こえたよ。おじい様とおばあ様のお声が」
トリスタン様は自分の右耳にそっと触れて、その横にある目尻が柔らかく下がる。
「そして僕にはもう一つ届いていて、『大切な孫をよろしくお願いします』と仰られていたんだ。だから、そちらに応えるために、お二人の前で改めて誓うよ」
柔らかく下がっていた目尻が元の位置に戻り、優しさと真剣さを含んだものへと変わる。そして、流麗な動作で私の右手を取って――
「愛しのマリエット。これからも貴方の人生を、幸せで染めてゆきます」
――手の甲にキス。唇と一緒に、想いを伝えてくださった。
「マリエット。貴方の心や体を傷付け兼ねない棘は、僕が全て抜く。だからいつまでも2人で、薔薇の道を歩いてゆこう」
「はい……っ。はいっ、トリスタン様……っ。貴方がいてくださったら、安心して進めます……っ。一緒に、薔薇の道を歩きていきましょう……っ」
瞳を潤ませながら頷き、そんな言葉を聞いたら、そうせずにはいられない。手の甲だけでは、我慢できない。
なので――
「トリスタン様……っ。愛しています」
「僕もだよ、マリエット。愛しています」
――今度は、唇と唇でキス。
おじい様、おばあ様、キトリー。大切な人達に見守られながら私達は、言葉と動作の両方で、最愛の人に想いを伝えあったのでした。
※明日からは、番外編を投稿させていただきます。
ただ……。私事の発生につき、初回のみ30分~1時間ほど遅れてしまう可能性がありまして。もしもそうなってしまった場合は、お許しくださいませ。
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