婚約者が愛していたのは、わたしじゃない方の幼馴染でした

柚木ゆず

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第11話 ………… シメオン視点(1)

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「わたしが――我々全員が把握したのは、6月30日。ヴァネッサくんとパトリスが聞いたのだよ、お前とヨランドくんのやり取りをな」

 あの日屋敷の裏で緊急的に行っていた、俺達の会話……。あれを、聞かれていた……!? ふたりに……!?

「お前は、ヨランドくんにだ――それは、今は伏せておくか。とにかくお前はヨランドくんに激しい好意を抱くようになり、だがそんなお前は以前から、わたしに嫌がらせをされていると思っていた。故に『好きな相手と婚約させない』『嫌いな相手と婚約させる』と確信し、ヴァネッサくんを大好きだと繰り返すようになった。……ヴァネッサくんを、利用し始めたのだ」
「………………」
「幼馴染を利用することに罪悪感を覚えない。それどころかお前に好意を抱くようになったと知った時は、嬉々として喜んだ。それは、許されるものではない。断じてな」
「………………」
「故にまずは・・・、今日お前達を夫婦とし――」
「おっ、お待ちください! 父上!!」

 早く反論をして、否定をしないと。
 最悪の事態を脱するべく、急いで大声をあげる。

「すべてが偽り!? 俺にはっ、ヨランドにもっ! 思い当たる節がありません! そっ、そうだよなっ!?」
「ええっ! わたくしにも思い当たる節がありませんわっ!」
「ヴァネッサとパトリスは嘘を吐いています! 二人がそうする理由は分かりかねますがっ、すべて嘘なんです! ありもしない話なんです! だって、その証拠に証拠がないじゃないですかっ! パトリスっ、ヴァネッサ! そこまで言うなら証拠があるんだろうなっっ!? 証拠を出してみろよ!!」

 俺達の関係を特定されるような物証は、一切残していない。
 昨日書いた手紙も、ヨランド宛てのものをちゃんと書き直してるからなっ。なにも問題はない!
 盗み聴きしたのは二人だけで、証拠がないなら誤魔化しは可能――

「確かに、目に見える証拠はないな。だがな、シメオンよ。わたし、ルノー、レオナルドも、ヴァネッサくんとパトリスの言い分はまことだと確信しているのだよ」
「なんですって!? どうしてですか!? まさか! パトリスは可愛い息子だから無条件で信じるのですか!?」
「……意図を説明しても聞き入れない、色々な意味で難しい人間だったが…………長男も次男も、あの時まではどちらも可愛い息子だった。故に片方の証言を贔屓はしない。わたし達が信じる理由は、シメオン、お前が認めているからなのだ。ヨランドくんと結婚するために作戦を進めていたとな」
「そんなことっ、認めていませんよ!? 一度だって認めていません! いつ俺が認めたというのですか!?」

 父上は何を言っているんだ!? なにバカげたことを言って――

「時期は、一昨日の正午過ぎ。場所はヴィッケルス。お前は、占い師に語っていたじゃないか」

 ――…………。
 え……?
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