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第12話 希望?絶望 シメオン視点(3)

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「…………………………………………。そんな……」

 すべてを聞かされた俺は、無意識的にその場にへたり込んだ。

 ヨランドの言っていたことは、99パーセント以上が嘘。
 俺に好意があると伝えてきたのは、ヴァネッサの悪評を広めるため。
 俺が優秀で優しいだなんて、全然思っていなくて……。
 自分の目的のために、ずっと利用されていた……。

「アンタが優秀なワケないでしょ!? アンタより優秀な人なんてねぇっ、この世にごまんといるわよ!! なに自惚れてるのよ! バッカみたい! 実力なしのプライドの塊だなんて、笑っちゃうわ!」
「信じて、いたのに……。信じていたのに……っ!」
「泣きたいのはこっちの方よ!! アンタの言う通りに動いていたら上手いこと結婚できるんじゃなかったの!? ちっとも上手くいかなかったじゃないのよ!! しかもっ、なんなのよ!? それどころか何もかも失ってしまったじゃないの!!」

 ――ヴァネッサに勝つどころかじゃないわよ!!――
 ――こんなの大負けじゃないの!!――。
 ――アンタなんて信じなきゃよかった!!――。
 ――そもそもっ、なんでアンタみたいなヤツが幼馴染なのよ!!――。
 ――もっと有能な男が幼馴染だったら、絶対に成功してた!!――。
 ――最悪よ!! ハズレを引いたわ!!――。
 ――最低!! こんな幼馴染要らなかった!!――。

 更に、大量の怒声が降り注いできて……。
 それでもまだ、ヨランドの怒りは収まらない……。

「こっちは一年間も我慢して持ち上げ続けたのに、ホント最悪!! 苦労は報われるんじゃなかったの!? 苦労の先には幸せが待ってるんじゃなかったの!? なんでこんな結末が待ってるのよ!!」
「……………………」
「こんなことになるならっ、わたくし主導で計画を練ればよかった! なにもかもお前のせいよ!!」

 再び暴言を吐いた後、うな垂れている俺の服を掴んで強引に引っ張り上げ……。
 バシン!
 また、俺の頬をビンタする……。

「黙ってないで何とか言いなさいよ!! 謝りなさいよ!! この無能っ!! 役立たずっ!! ゴミカス!!」

 そしてみたび、暴言を吐く。
 ……………………………………!!
 だから……。
 そんなことを、されたから……!!


 ぷつん


 俺の中で、何かが切れるような音がして――
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