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エピローグ~シメオンとヨランドの場合~ 俯瞰視点(2)

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 ※(( ))のセリフは、心の中の声となっております。








((駄目だ……。無理だ……))
((よく考えてみたら……。わたくしだけでは、無理だわ……))

 シメオンとヨランドが、突然言い争いを止めた理由。それは、気付いてしまったからです。

 独りでは山で生きていけない。
 という事実に。

((やっぱり、無理だ……。食料と水の確保なんて、ひとりでできない……))
((水はともかくとして、食べ物の取り方なんて知らないわ……。それに、火を起こせる自信もない……))
((ふたりなら…………コイツがいれば、なんとかなるはず……。だが……))
((数が増えたら…………コイツがいたら、どうにかなるわ……。でも……))

 目の前にいるのは、最悪の人生をもたらした元凶。世界で一番忌々しい相手。
 どちらも被害者を主張しているため、協力して生きていきたくはありません。
 そのため、頭痛が発生してしまうほどに迷いますが――

((…………死ぬよりは、マシだ……))
((…………死ぬよりは、マシね……))

 死にたくない。そんな感情がシメオンとヨランドを動かし、ふたりは協力して生きていくこととなりました。
 そうしてシメオンとヨランドは和解をし、力を合わせて仲良く暮らしてく――そんな未来が、訪れることはありませんでした。


「ヨランド! そっちを探せと言っているだろうが!!」
「うるさいわよ!! わたくしに指示出すな! 探したいなら自分で行きなさいよ!!」

「シメオン! 火が弱まってきてるでしょうが!! 早く何か燃やしなさい!!」
「黙れ指図するな!! 言う前に自分でやれ!! この寄生虫が!!」


 事あるごとに、ふたりは対立。最低でも1時間に1回は衝突し、二人の間に火花が散ります。

「なんでこんなヤツと一緒にいないといけないんだっ! 最悪だ……!!」
「それはこっちの台詞よ!! 最悪っ! 最低よ!!」

 イライラ。ムカムカ。イライラ。ムカムカ。
 お互いがちゃんと非を認めて歩みよれば、ある程度は幸せな毎日を過ごすことができます。ですが被害者を主張する二人が謝るはずもなく、ずっとこの調子。

 明日も明後日も、その先もずっと。

 二人はぶつかり合い、ストレスが溜まりっぱなしの人生を、死ぬまで送ることになるのでした――。










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