殿下? やっと魅了が解けたのに、なぜ喜ばれないのですか?

柚木ゆず

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第1話 魅了の裏側~自業自得~ フルク視点

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 違うんだ。ペリーヌを裏切るつもりはなかった。彼女はあの外見に加えて『自より他を優先する』性格の持ち主で、見た目も中身も何一つ問題はなかった。点数にすると100点満点で、文句の付け所がなかったんだ。

 ただ――。
 ちょっと飽きてしまっただけなんだ。

 いくら好物でも、同じものばかり食べていたら飽きてしまうだろう? それと同じ。たまには違うものの味を楽しみたくなってしまい、元々容姿が気に入っていたキトリーに手を出してしまったんだ。

『お前のような人間が、交際相手が見つからないなんてな。なに、悩む必要はないぞ。周りの見る目がないだけなんだからな』

 なかなか相手が見つからず落ち込み、『なにがいけないんだろう?』と考え込んで人知れず泣いていた。そんな姿を偶然目にしたことで俺は『コレを利用すれば色々と良い思いができる』とひらめき、慰めを足掛かりとして関係を深めていったのだった。

 すべてが罠だとも知らずに――。

『なっ!? きっ、キトリー! 今なにをした――あ、あたま、が……ボーっとして……。なにも、かんがえられなく、なる……? なん、だ……これ、は……!?』
『フルク殿下、それは魅了が効いている証ですの。……引っかかってくれてありがとうございます。これから貴方様は、わたしの人形になるのですわ』

 創作物などで有名な『魅了』は実在していて、俺はキスをした際にその発動に必要な丸薬を呑まされてしまった。
 ヤツは、この状況を作り出すために……! 意図的に弱った姿を晒すなどし、俺の欲を煽っていたんだ……!!

『よ、よくも騙しやがったな……! 許さない、からな……!!』
『許していただかなくて結構ですわ。だってまもなく、貴方様の意思はなくなるんですもの』
『く、くそぉっ! くそぉぉおおおおおおおおおおおお――…………。はい、キトリー様。俺は貴方様を誰よりも愛し、貴方様のご命令にのみ従います』

 嵌められてしまったことで主従関係が出来上がってしまい、以降俺はこの女を妻とするため水面下でじわじわと工作を行う羽目になってしまった。だが幸いにもペリーヌのファインプレイで忌々しい企みは阻止させることになり、悪女の計画は無事失敗に終わったのだが――。
 それはそれで、とてつもなく厄介なことになってしまったのだった。

 その様子ならまだ吐いていないようだが、キトリーが細かい経緯を語ってしまったら……。浮気がこの場にいる全員にバレてしまう!!


((誘導されていたとはいえ……こっちから声をかけて魅了されたなんて知られたら、大変なことになってしまう……。ど、どうにかして誤魔化さないと!!))
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