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第3話 逃げ切るために フルク視点(1)
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「キトリー、もう苦しい言い訳はやめるんだ。……お前にも、多少は貴族の矜持が残っているはず。俺に擦り付ける醜き嘘は撤回し、素直に非を認めろ」
「なっ! 違いますわっ!! へっ、陛下妃殿下っ、皆様っ、申し訳ございませんっ。わたくしは嘘を吐いてしまいましたわ!! ですがそれは魅了は突発的だという点などでっ、全てではありませんのっ! 始まりは殿下から、は事実なんですの!」
この嘘はもう効かない。そう悟ったヤツは改めて胸の前で手を組み、今回はすべて真実だけを口にした。
――だが、もう遅い――。
「……はぁ、残念だ。矜持は微塵も残っていなかったらしいな」
「っっ!! 殿下――フルクっ!! 嘘を吐いているのはそっちで――」
「父上、これ以上この場で話すことはありません。この者を連行致しましょう」
ため息を吐きながら向き直ると、返ってきたのは頷き。俺の言い分は認められ、全会一致で忌々しい女の連行が始まったのだった。
「どうして!? なぜっ!? 本当なのにっ! 信じてくれませんの!?」
それは、お前が嘘をついてしまったから。ひとつでも大きな嘘を吐いた者は信用をなくし、以降はなにを言っても信じてもらえなくなるんだよなぁ。
「しんじてぇ!! 悪いのはアイツなのぉ! しんじてぇえええええええええええ!!」
なので、いくら叫んでも状況が変わることはなくて――。俺を利用し振り回しやがった醜悪な女は、衛兵によって引きずり出されてしまったのだった。
「…………ふぅ、ようやく一区切りついたな。父上、母上、シメオン、みんな、ありがとうございました」
目を血走らせながら絶叫していたキトリーが、この場から消えるまで立っていた場所。そこを一瞥した俺は家族達の顔を見回し、ひとりひとりに丁寧に腰を折り曲げた。
「そして…………ペリーヌ、改めてありがとう。君が居てくれた、想っていてくれていたおかげで、俺は悪女の支配から逃れられた。この恩は一生涯忘れないよ」
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
ペリーヌに対してはひと際多くの感謝を伝え、しっかりと頭を下げ――ながら、心の中でたっぷりとほくそ笑んだ。
((よし、成功だ))
キトリーがああなった以上、俺に疑いの目が向くことはない。
不幸中の幸い、浮気の証拠も残っていないからな。のちのち発覚する心配もなく、これまでの日常が戻って来る!
「少しでも早くそのお礼をしたいと思っていて、俺にできることならなんでもする。させて欲しい。ペリーヌ、何でも言ってくれ」
すべて上手くって今は最高の気分だし、彼女のおかげで自由を取り戻せた。なので満面の笑みを浮かべながら近寄っていって――
「ん? みんな……? どうしたんだ……?」
――そうしていたら、全員の様子がおかしいことに気が付いた。
??? なんでみんな急に顔が曇り、揃ってため息を吐き始めたんだ……?
「なっ! 違いますわっ!! へっ、陛下妃殿下っ、皆様っ、申し訳ございませんっ。わたくしは嘘を吐いてしまいましたわ!! ですがそれは魅了は突発的だという点などでっ、全てではありませんのっ! 始まりは殿下から、は事実なんですの!」
この嘘はもう効かない。そう悟ったヤツは改めて胸の前で手を組み、今回はすべて真実だけを口にした。
――だが、もう遅い――。
「……はぁ、残念だ。矜持は微塵も残っていなかったらしいな」
「っっ!! 殿下――フルクっ!! 嘘を吐いているのはそっちで――」
「父上、これ以上この場で話すことはありません。この者を連行致しましょう」
ため息を吐きながら向き直ると、返ってきたのは頷き。俺の言い分は認められ、全会一致で忌々しい女の連行が始まったのだった。
「どうして!? なぜっ!? 本当なのにっ! 信じてくれませんの!?」
それは、お前が嘘をついてしまったから。ひとつでも大きな嘘を吐いた者は信用をなくし、以降はなにを言っても信じてもらえなくなるんだよなぁ。
「しんじてぇ!! 悪いのはアイツなのぉ! しんじてぇえええええええええええ!!」
なので、いくら叫んでも状況が変わることはなくて――。俺を利用し振り回しやがった醜悪な女は、衛兵によって引きずり出されてしまったのだった。
「…………ふぅ、ようやく一区切りついたな。父上、母上、シメオン、みんな、ありがとうございました」
目を血走らせながら絶叫していたキトリーが、この場から消えるまで立っていた場所。そこを一瞥した俺は家族達の顔を見回し、ひとりひとりに丁寧に腰を折り曲げた。
「そして…………ペリーヌ、改めてありがとう。君が居てくれた、想っていてくれていたおかげで、俺は悪女の支配から逃れられた。この恩は一生涯忘れないよ」
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
ペリーヌに対してはひと際多くの感謝を伝え、しっかりと頭を下げ――ながら、心の中でたっぷりとほくそ笑んだ。
((よし、成功だ))
キトリーがああなった以上、俺に疑いの目が向くことはない。
不幸中の幸い、浮気の証拠も残っていないからな。のちのち発覚する心配もなく、これまでの日常が戻って来る!
「少しでも早くそのお礼をしたいと思っていて、俺にできることならなんでもする。させて欲しい。ペリーヌ、何でも言ってくれ」
すべて上手くって今は最高の気分だし、彼女のおかげで自由を取り戻せた。なので満面の笑みを浮かべながら近寄っていって――
「ん? みんな……? どうしたんだ……?」
――そうしていたら、全員の様子がおかしいことに気が付いた。
??? なんでみんな急に顔が曇り、揃ってため息を吐き始めたんだ……?
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