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第9話 愛を贈らせてみた結果 俯瞰視点(1)
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「お父様、今日で3か月になりますわ。そろそろ」
「頃合い、だろうな。もう充分だろう」
敢えてたっぷりと愛を贈らせておいて否定し、きっぱり諦めさせる。そんな作戦を秘密裏に始め、季節が一つ過ぎ去ったころでした。
ザスワーズ伯爵邸内ではレベッカとファビアンが、カレンダーを眺めて頷き合っていました。
『レベッカ、僕達の初めてのデートは『レイザナンの湖』だったよね? 今日は一日、あの日のように君をエスコートするよ』
『はい、ロバン様。よろしくお願い致します』
『見ておくれ、レベッカ。今回は君のために、国内外で人気のあるスイーツを集めてみたんだ。心行くまで楽しんで欲しい』
『ありがとうございます。いただきますわ』
『最近はずっと僕の我が儘を聞いてもらっていたから、今日はレベッカが好きなことをしよう。やりたいこと、行きたい場所はない?』
『そう、ですね……。わたくしもずっと、あの頃に戻りたいと思っておりまして。本日はゆっくりと、出会ってから今日までの間に過ごした時間を一緒に振り返りたいですわ』
『……嬉しいよ、レベッカ。じゃあ庭でお茶やお菓子を楽しみながら、時間が許す限り振りかえろう!』
などなど。あの日からいくつも『我慢』をしてたっぷりと愛を注がせ、同時に『元に戻りたい』と本気で願っているというアピールも入念に行ってきました。元々は2か月目で切り出す予定でしたが、念のためにもう1か月追加していました。
なので二人の中には『間違いなく成功する』という確信があり、いよいよ決行することが決まったのです。
「では、行こうか。最後まで気を抜かないようにな?」
「失敗すれば、大変なことになるんですもの。抜くはずがありませんわ」
2日後にヴァレンタ伯爵邸でロバンと会うようになっていたため、レベッカ達は翌々日の朝に出発。移動中もしっかりと作戦の最終確認をして万全の態勢を作り、到着後は応接室にて大量の申し訳なさを露わにしつつ、やっぱり無理だったという旨を伝えました。
((表情も台詞も、一分の抜かりもありませんわ。……三か月間愛を贈り続けて、その結果駄目と言われたんですもの。諦める以外の選択肢はありませんわね))
完璧に演技を行ったレベッカは――隣にいるファビアンも、心の中でほくそ笑みます。
ですが、
『くそ、まさかレベッカにそんな一面があっただなんて……!! だが、手放しはしないぞ。お前は絶対に手元に置いておく、絶対にな……!!』
対面のソファーに座っているロバンに、諦める気などありません。そのため――
「そっか……。でもね、まだ可能性はあると信じているんだよ。だからもう少し……。僕が納得できるまで、チャンスをください」
レベッカ達の思い通りには進まず、二人は激しく戸惑う羽目になるのでした。
((そんなっ、これでも駄目だなんて! どっ、どうすればいいんですの……!?))
((また何か月も待つなんてできんぞ! な、なんとかしなければ……!))
「頃合い、だろうな。もう充分だろう」
敢えてたっぷりと愛を贈らせておいて否定し、きっぱり諦めさせる。そんな作戦を秘密裏に始め、季節が一つ過ぎ去ったころでした。
ザスワーズ伯爵邸内ではレベッカとファビアンが、カレンダーを眺めて頷き合っていました。
『レベッカ、僕達の初めてのデートは『レイザナンの湖』だったよね? 今日は一日、あの日のように君をエスコートするよ』
『はい、ロバン様。よろしくお願い致します』
『見ておくれ、レベッカ。今回は君のために、国内外で人気のあるスイーツを集めてみたんだ。心行くまで楽しんで欲しい』
『ありがとうございます。いただきますわ』
『最近はずっと僕の我が儘を聞いてもらっていたから、今日はレベッカが好きなことをしよう。やりたいこと、行きたい場所はない?』
『そう、ですね……。わたくしもずっと、あの頃に戻りたいと思っておりまして。本日はゆっくりと、出会ってから今日までの間に過ごした時間を一緒に振り返りたいですわ』
『……嬉しいよ、レベッカ。じゃあ庭でお茶やお菓子を楽しみながら、時間が許す限り振りかえろう!』
などなど。あの日からいくつも『我慢』をしてたっぷりと愛を注がせ、同時に『元に戻りたい』と本気で願っているというアピールも入念に行ってきました。元々は2か月目で切り出す予定でしたが、念のためにもう1か月追加していました。
なので二人の中には『間違いなく成功する』という確信があり、いよいよ決行することが決まったのです。
「では、行こうか。最後まで気を抜かないようにな?」
「失敗すれば、大変なことになるんですもの。抜くはずがありませんわ」
2日後にヴァレンタ伯爵邸でロバンと会うようになっていたため、レベッカ達は翌々日の朝に出発。移動中もしっかりと作戦の最終確認をして万全の態勢を作り、到着後は応接室にて大量の申し訳なさを露わにしつつ、やっぱり無理だったという旨を伝えました。
((表情も台詞も、一分の抜かりもありませんわ。……三か月間愛を贈り続けて、その結果駄目と言われたんですもの。諦める以外の選択肢はありませんわね))
完璧に演技を行ったレベッカは――隣にいるファビアンも、心の中でほくそ笑みます。
ですが、
『くそ、まさかレベッカにそんな一面があっただなんて……!! だが、手放しはしないぞ。お前は絶対に手元に置いておく、絶対にな……!!』
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「そっか……。でもね、まだ可能性はあると信じているんだよ。だからもう少し……。僕が納得できるまで、チャンスをください」
レベッカ達の思い通りには進まず、二人は激しく戸惑う羽目になるのでした。
((そんなっ、これでも駄目だなんて! どっ、どうすればいいんですの……!?))
((また何か月も待つなんてできんぞ! な、なんとかしなければ……!))
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