わたしから婚約者を奪った幼馴染が、顔を真っ赤にして怒鳴り込んで来た

第12話 模索 俯瞰視点（２）

　起死回生を期待して顔を覗き込んだものの、ファビアンに即否定をされてしまった。それによってレベッカは――

「いやああああああああああああ!!　いやああああああああああああああああ!!　いやあああああああああああああ!!」

　改めてロバンとの婚約、結婚、同棲をするという現実が脳内に溢れてしまい、頭を抱えながら耳を劈く悲鳴をあげました。

「好きでもないし興味もない人と一生を過ごすだなんてっ！　嫌っ！　いやああああああああああ!!　こんなのいやぁあああああああああああああああああああ!!」
「……………………………………」
「こんなのっ、生きているって言えませんわ!!　死んでいると一緒――もっとひどくてっ、地獄にいるのとおんなじですわ!!　なんでわたくしがこんな目に遭わないといけませんのぉおおお!?　いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「………………。地獄にいると、おなじ……」

　ぽつりと。愛娘の絶叫を歯噛みで聞いていたファビアンは、静かに呟き、叫び続けていたレベッカの両肩に手を置きました。
　そして――

「…………レベッカよ。これ以上に、辛いことはないのだな……？　結婚と同棲に勝る不幸は、ないのだな……？」
「え……？　お、おとうさま……？」
「確かに、これ以上に辛いことはないのだな？　間違いなく、結婚や同棲に勝る不幸はないのだな？」
「え、ええっ、ありませんわ!!　あるはずがありませんわ!!　それらは最悪っ、それよりも下なものはありませんわ!!」
「……………………そうか、分かった。では…………。これだけは使いたくはなかったが……。奥の手を使おう」

　――彼はじっくりと娘の瞳を見つめたあと、重い口調で以てこのように言の葉を紡いだのでした。