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第13話 決行~涙の別れ~ 俯瞰視点(1)
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「……レベッカ……! レベッカ……っ! 私の愛娘よ……! 元気でな……!!」
「ええ、お父様……! お父様も、お元気で……!!」
奥の手の実行を決めてから、一か月後。強めの雨が降っている日の、正午過ぎ。ザスワーズ伯爵邸のエントランスでは、レベッカとファビアンが涙を浮かべて抱き合っていました。
ロバンはレベッカを強く強く求めていて、事故後は徹底的にマークされてしまう――。会いに行けば真実が露見しかねないため、そうすることはできない――。
そのためこれが最後の別れとなっていて、二人はこうして永遠の決別を悲しんでいたのです。
「もうまもなくお前はレベッカ・ザスワーズの名と地位を捨てるが、私の中ではずっとレベッカ・ザスワーズだ……! 唯一無二の、自慢の娘だよ……!!」
「わたくしの中でも、お父様はいつまでもお父様ですわ……!! ……ファビアンお父様、わたくしを魔の手から救ってくれてありがとうございます……! ずっと、ずっと愛してますわ……!!」
レベッカの中では、自分は被害者。すっかり裏切りと略奪を忘れて被害者ぶり、もう一度しっかりと抱き合います。
そうして今一度親子はぬくもりと愛を感じ合い、お互いに名残惜しさを感じながら、その身体を離しました。
「……お父様……。それでは、行ってまいりますわ」
「……ああ、気を付けてゆくのだぞ。さようなら。また来世で会おう」
「はい。さようなら。また来世でお会いしましょう」
最後に、指切り。二人は大粒の涙を零しながら小指を絡め合い、玄関部の扉を通って外へと出ます。
――遠方にいる友人から誘われたパーティーに向かう途中で、事故に遭った――。
そう演出するためまずは、パーティーに必要な荷物――に偽装した、新生活用の荷物を積み込みます。そうして到着後換金するための宝石や指輪を乗せたあと、いよいよレベッカが乗り込むことになりました。
「久しぶりの再会、だったな。楽しんでおいで」
「ええお父様。楽しんできますわ」
念には念をでここでも一芝居打って笑い合い、タラップに足をかけ――
「ん……?」「あら……?」
レベッカが、馬車に乗り込もうとしていた時でした。不意に、門の前に馬車が停まって――
「ええ、お父様……! お父様も、お元気で……!!」
奥の手の実行を決めてから、一か月後。強めの雨が降っている日の、正午過ぎ。ザスワーズ伯爵邸のエントランスでは、レベッカとファビアンが涙を浮かべて抱き合っていました。
ロバンはレベッカを強く強く求めていて、事故後は徹底的にマークされてしまう――。会いに行けば真実が露見しかねないため、そうすることはできない――。
そのためこれが最後の別れとなっていて、二人はこうして永遠の決別を悲しんでいたのです。
「もうまもなくお前はレベッカ・ザスワーズの名と地位を捨てるが、私の中ではずっとレベッカ・ザスワーズだ……! 唯一無二の、自慢の娘だよ……!!」
「わたくしの中でも、お父様はいつまでもお父様ですわ……!! ……ファビアンお父様、わたくしを魔の手から救ってくれてありがとうございます……! ずっと、ずっと愛してますわ……!!」
レベッカの中では、自分は被害者。すっかり裏切りと略奪を忘れて被害者ぶり、もう一度しっかりと抱き合います。
そうして今一度親子はぬくもりと愛を感じ合い、お互いに名残惜しさを感じながら、その身体を離しました。
「……お父様……。それでは、行ってまいりますわ」
「……ああ、気を付けてゆくのだぞ。さようなら。また来世で会おう」
「はい。さようなら。また来世でお会いしましょう」
最後に、指切り。二人は大粒の涙を零しながら小指を絡め合い、玄関部の扉を通って外へと出ます。
――遠方にいる友人から誘われたパーティーに向かう途中で、事故に遭った――。
そう演出するためまずは、パーティーに必要な荷物――に偽装した、新生活用の荷物を積み込みます。そうして到着後換金するための宝石や指輪を乗せたあと、いよいよレベッカが乗り込むことになりました。
「久しぶりの再会、だったな。楽しんでおいで」
「ええお父様。楽しんできますわ」
念には念をでここでも一芝居打って笑い合い、タラップに足をかけ――
「ん……?」「あら……?」
レベッカが、馬車に乗り込もうとしていた時でした。不意に、門の前に馬車が停まって――
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