婚約破棄をされるのですね? でしたらその代償を払っていただきます

柚木ゆず

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第2話 理由~婚約当日の、奇妙な出来事~ フルール視点(1)

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「フルール、おはよう。ゆうべは…………ふふっ。あまり眠れなかったようだな」
「はいお父様。早く朝になって欲しいと思っていたから、なのだと思います。何度も目が覚めてしまいました」

 それは今から、およそ半年前のことでした。お屋敷の一階にある食堂へと下りた私は、フランシスお父様と笑い合っていました。
 今日は1年間交際を行ってきた、大好きな方――クリストフ様と婚約を結ぶ日、ついに婚約者となれる日。日程が決まった時から今日という日を楽しみにしていて、そのためこうなっていたのです。

「よかったな、フルール。さあ、一緒にベーグルを食べようか」
「はいっ」

 この国では婚約を交わす日の朝は、家族でイチゴのベーグルを食べる風習があります。ですので私達は定番メニューを食し、その後出発の支度を始めます。

「お嬢様! 今日はいつも以上に輝かせてみせますよっ!!」

 メイクなどを特技としているクララ侍女によって綺麗にしてもらって、やがて準備が終わりました。なので私は最後の確認を行い、馬車へと向かうべく部屋を出ようとしていた――その時でした。

《待って!》

 急に頭の中に、不思議な声が響いてきたのです。

「……私以外誰もいないのに、声が聞こえている……。しかも、頭の中になんて……。どうなっているのでしょうか……?」

 そちらはとても気になりましたが、今日はとにかく早く動きたいことがありました。ですので私はそのまま馬車へと乗り込み、6時間ほどでしょうか。たくさんのドキドキとワクワクを抱きながら進み、目的地であるラトーレルア侯爵邸に到着しました。
 そのため、降りようとした――その瞬間、でした。

《待って! 駄目よ! そのまま進めては駄目っ! 悲劇を繰り返してしまう羽目になりかねないからっ! 思い出して私っ!!》

 今度は切実な大きな声が頭の中を駆け抜け、

「ぁ。ぁ……!!」

 それによって私は、思い出したのでした。
 私はかつてアレーテ・ルクサラスという名の、伯爵令嬢だったこと。かつて最愛の婚約者に根も葉もない汚名を着せられ、無実の罪で婚約破棄をされた上に投獄されてしまったことを――。
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