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第3話 真の恋人と過ごす時間は シブリアン視点(2)
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「俺にできることなら、なんでもしよう。お願いってなんだい?」
「……これから一緒に『ラヴィータの丘』に行って、一緒に夕焼けを見て欲しいんです」
最愛の人からのお願いが、予想外なものだった。
ラヴィータの丘に行って、夕焼けを見る……?
「だめ……ですか……?」
「いや。そこならそこまで遠くなくて、行けないこともないよ。……今日って、特別な夕焼けが見える日だったっけ……?」
頭の中を探してみたものの、そんな記憶は見つからなかった。何年に一度のなんとか、と話題になっていた覚えはないが……?
「そうではないんです。実は先日、ラヴィータの丘で一緒に夕焼けを見たふたりはいつまでも幸せにいられる、というお話を聞きまして。シブリアン様とず~っと幸せで居続けたいので、そうしたいな、と思いました」
「へぇ~、そうだったんだ。そんな言い伝え? があるんだね」
あのあたりの地域には詳しいが、そういった話は初耳だ。クロエのおかげでひとつ賢くなったな。
「そういうことなら、是非行こう。知った瞬間から俺の希望にもなったからね」
「シブリアン様……! ありがとうございます……!!」
「こちらこそだよ。提案してくれてありがとう」
いつまでも幸せに居られる。もしかするとアドリエンヌが死んで、クロエと婚約できるようになるかもしれないもんな。
俺はそう願いながらリストランテを出て、目撃される心配がないか細心の注意を払いながらクロエと共に馬車に乗り込み、ラヴィータの丘を目指した。
ソコはさっき言ったようにそこまで遠くはなく、35分ほどで到着。綺麗な夕焼けが見られるタイムリミットが迫って来ていたので、俺達は急いで見晴らしが良い場所へと向かった。
「……よしっ、ちゃんと見えた! これで」
「はいっ。いつまでも幸せにいられますね!」
笑顔を向けると眩しくて可愛らしい喜色満面の笑みが返ってきて、柔らかく緩んでいたそんな頬は、やがてピンク色に染まった。
「??? クロエ……?」
「…………幸せの証を一緒に見ていたら、『愛している』の証が欲しくなってしまいました。……わたしに、くださいませんか……?」
「もちろん。あげたいし、俺も欲しいよ」
俺はそっと彼女を抱き寄せ、瑞々しい唇に唇を重ね――キスを交わす。
今日のキスはチョコの味が残る、とても心地よく美味しいものだった。
「……シブリアン様。もう一回、いただけますか……?」
「ああ、いいよ。好きなだけあげよう」
もう1回、そしてもう1回。合計3度の口づけを交わし、俺達は微笑み合った。
「ありがとうございます。ますますわたし達、幸せになれますねっ」
「そうだね。素敵なことを教えてくれてありがとう。おまけでもう一つ、素敵な時間を過ごせたよ」
もっと一緒に居たいが、仕方がない。できることなら『姫』を家まで送ってやりたいが、それも仕方がない。
俺は馬車の寄り合い所の近くまでクロエを送って別れ、懐中時計を確認しつつ家路を走らせたのだった。
「この時間なら、怪しまれはしないな。……次に会えるのは、一週間後か。楽しみだ」
クロエの温もりが残る唇に触れながら、微笑む。
……その時の俺は、まだ知らなかったのだった。
楽しみにしていた一週間後に……。あんなことが、待っているだなんて……。
「……これから一緒に『ラヴィータの丘』に行って、一緒に夕焼けを見て欲しいんです」
最愛の人からのお願いが、予想外なものだった。
ラヴィータの丘に行って、夕焼けを見る……?
「だめ……ですか……?」
「いや。そこならそこまで遠くなくて、行けないこともないよ。……今日って、特別な夕焼けが見える日だったっけ……?」
頭の中を探してみたものの、そんな記憶は見つからなかった。何年に一度のなんとか、と話題になっていた覚えはないが……?
「そうではないんです。実は先日、ラヴィータの丘で一緒に夕焼けを見たふたりはいつまでも幸せにいられる、というお話を聞きまして。シブリアン様とず~っと幸せで居続けたいので、そうしたいな、と思いました」
「へぇ~、そうだったんだ。そんな言い伝え? があるんだね」
あのあたりの地域には詳しいが、そういった話は初耳だ。クロエのおかげでひとつ賢くなったな。
「そういうことなら、是非行こう。知った瞬間から俺の希望にもなったからね」
「シブリアン様……! ありがとうございます……!!」
「こちらこそだよ。提案してくれてありがとう」
いつまでも幸せに居られる。もしかするとアドリエンヌが死んで、クロエと婚約できるようになるかもしれないもんな。
俺はそう願いながらリストランテを出て、目撃される心配がないか細心の注意を払いながらクロエと共に馬車に乗り込み、ラヴィータの丘を目指した。
ソコはさっき言ったようにそこまで遠くはなく、35分ほどで到着。綺麗な夕焼けが見られるタイムリミットが迫って来ていたので、俺達は急いで見晴らしが良い場所へと向かった。
「……よしっ、ちゃんと見えた! これで」
「はいっ。いつまでも幸せにいられますね!」
笑顔を向けると眩しくて可愛らしい喜色満面の笑みが返ってきて、柔らかく緩んでいたそんな頬は、やがてピンク色に染まった。
「??? クロエ……?」
「…………幸せの証を一緒に見ていたら、『愛している』の証が欲しくなってしまいました。……わたしに、くださいませんか……?」
「もちろん。あげたいし、俺も欲しいよ」
俺はそっと彼女を抱き寄せ、瑞々しい唇に唇を重ね――キスを交わす。
今日のキスはチョコの味が残る、とても心地よく美味しいものだった。
「……シブリアン様。もう一回、いただけますか……?」
「ああ、いいよ。好きなだけあげよう」
もう1回、そしてもう1回。合計3度の口づけを交わし、俺達は微笑み合った。
「ありがとうございます。ますますわたし達、幸せになれますねっ」
「そうだね。素敵なことを教えてくれてありがとう。おまけでもう一つ、素敵な時間を過ごせたよ」
もっと一緒に居たいが、仕方がない。できることなら『姫』を家まで送ってやりたいが、それも仕方がない。
俺は馬車の寄り合い所の近くまでクロエを送って別れ、懐中時計を確認しつつ家路を走らせたのだった。
「この時間なら、怪しまれはしないな。……次に会えるのは、一週間後か。楽しみだ」
クロエの温もりが残る唇に触れながら、微笑む。
……その時の俺は、まだ知らなかったのだった。
楽しみにしていた一週間後に……。あんなことが、待っているだなんて……。
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