上 下
14 / 23

第8話 平穏は何の前触れもなく崩壊する シブリアン視点(2)

しおりを挟む
「ど、どうしたんですか父上? 俺は今、来てはいけなかったのですか……?」
「…………………………」
「ち、父上? 父上……? なぜ黙っているんです……? 喋ってくれないと分かりませんよ。俺はなぜいきなり怒鳴られてたので――」
「これを見ろ。身に覚えがあるだろ?」

 やっと喋ったと思ったら、父上は手に持っていた紙を――一枚の写真をこちらに向けて来た。
 見ろと言われたので、見てみよう。
 その写真には、何が写ってるんだ――

「…………………………。え?」

 俺は、我が目を疑った。
 う、うそ、だろ? どうなってるだ? なん……。なん、で――


 俺とクロエがキスをしている写真が、ここにあるんだ!?


 ロバートが所持していてっ、鑑定が終わったら返って来ることになっているのに……。どうしてここにあるんだ!?

「ジャックがたった今、教えてくれた。この写真が――この女性とお前が浮気をしていたという話が、あちこちで広まっているそうだ」
「……っっ!! ロバート……!! アイツがっ、裏切りやがった……!!」

 あの約束は、嘘だったんだ……!
 最初からアイツは、こうするつもりだった……! 自分が欲しいものを手に入れたあとは、俺を裏切って嗤うつもりだったのか――

『なら……。ローヴェラル神に、誓えるか?』
『ああ、実際にそうするつもりなのだから誓えるさ。ローヴェラル神に誓って、約束しよう。本物だと証明されたら即日、ここに招待してあの写真を返すとな』

 違う。そんなはずはない。
 思い出した!
 アイツはあの時、俺に問いかけに応じて『ローヴェラル神』に誓いを立てた。
 アイツに――ラクテールア子爵家の人間にとって、ローヴェラル神は絶対的な存在! 反故になんてできるはずのない存在なんだ!
 あの時そう言ったからには、約束を破るはずなんてないんだ!

((だ、だが……))

「この写真は、一切加工されてはいないそうだ。この一枚について詳しく説明してもらおうか、シブリアン君」
「なにもかも、だ。詳しく説明してもらうぞ、シブリアン」

 実際、おじさんはあの写真を――恐らく複製されたもののひとつを手に入れている。
 裏切るはずがないのに、裏切っている。
 なにが起きているんだ……!?




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

番を辞めますさようなら

恋愛 / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:290

【完結】目覚めたら、疎まれ第三夫人として初夜を拒否されていました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,618pt お気に入り:3,041

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,825pt お気に入り:4,661

【完結】裏切り者には制裁を!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:782

処理中です...