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第8話 平穏は何の前触れもなく崩壊する シブリアン視点(1)

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「……ん? なんだ……?」

 それは、3日後の夕方のことだった。部屋で読書をしていたら、窓の外が急に騒がしくなったのに気が付いた。

「慌ただしく門が開く音と、これは…………急いで馬車が入って来て、停まる音か。どうしたんだ?」

 耳を澄ましていた俺は目で確認してみたくなり、窓際まで行って外を覗いてみた。
 すると………………??? ナジューラル子爵家の馬車が停まっていて、そこからジャックおじさん――おじさんだけじゃなくアドリエンヌも一緒に降りてきて、2人いる門番の1人ニコと共にウチの屋敷に入った。

「…………2人で来る……。今日、会う約束をしていたか……?」

 デスクに戻って、スケジュールを記した手帳を確認してみる。
 そんな予定は…………ない。父上とおじさんが会う予定もなくて、やっぱり今日は特別な予定は入っていなかった。

「じゃあ、急遽の訪問。だからあんなにも慌てていたのか」

 父上とおじさんは――ウチとナジューラル家は、共同で事業を立ち上げようとしている。事業に関することで、何かしら問題が発生したのかもしれない。

「それ以外、考えられないな。きっとそうだ――でも、だとしたらアドリエンヌも一緒にいる理由が分からなくなる」

 定期的に会っている時に、アドリエンヌを連れてくるのは分かる。俺とアドリエンヌは婚約者なんだからな。
 けど今日は、非常事態なんだぞ。わざわざアドリエンヌを同行させるか?

「……せっかくの機会だから、連れて来た……? まさか。それはないな」

 おじさんの性格を鑑みると、そういう時は自分だけで来る。その予想ははずれだ。

「じゃあ、なんなんだ……? なにが起きているんだ……?」

 ………………………………………………。

「やめだ。考えてもしょうがない」

 推理する材料が少なすぎて、いくら頭を使っても意味はない。本人達から聞けば簡単に把握できるんだし、下に会いに行こう。

「今良い場面だったが、気になるしな。行ってみよう」

 俺は本にしおりを挟んで閉じ、部屋を出てエントランスを目指す。
 廊下を歩いて階段を降り、トコトコと前進していく。そうしたらエントランスが見えてきて、そこでは父上が2人と話しをしていて――

「シブリアン!!」

 ――父上は俺に気付くや、急に怒鳴り声を出したのだった。
 え? な、なんだ……?


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