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第6話 人間界にて~1つめの思い出の場所~ 俯瞰視点(3)

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「「「チチチッ!」」」
《やったぁっ! 反応した! ラシェルちゃんが声に反応したよ!!》

 いえす――。小さな小さな声が、零れ落ちた瞬間でした。ラシェルの肩で不安そうにしていた3匹が喜びの声を上げ、セレスティンの脳内にはゴーチェの歓声が響いてきました。
 セレスティンは出発前に、あちらにいる彼が状況を把握できるようにしていました。そのため反応を感知したゴーチェは、大急ぎでテレパシーを送っていたのです。

「「「チチチチチッ!」」」
《二択に答えてるから自分の意思だっ、人形じゃなくなってきてるっ! セレ様っ、やりましたねっ! このままドンドン話しかけたら、一気に元通りになるんじゃないですかっ?》
「残念だが、そう都合よくはいかない。今のラシェル嬢なら、他の問いにも返事ができるだろう。しかしこの状態でそういった行動を繰り返しても――彼ら3匹の協力を得て確認を続けたとしても、元に戻る可能性は皆無だ」

 回復は一点からの刺激ではなく、複数の刺激によって行われるもの。そのため別の『生きたい』『元に戻りたい』という感情が必要。
 それを理解しているセレスティンは左右に首を振り、「だが」と続けます。

「こうして『返事ができるようになった』のは、大きな前進だ。状況は確実によくなっている」
《ちょっとガックリきちゃったけど、安心しました。セレ様、次もお願いします――ってあれ? セレ様、なんの術を使うんですか?》

 セレスティンの足元に現れた魔法陣は、転移用のものではありませんでした。そのため精霊界で首を傾げていると、「認識阻害の術を使う」と返事がありました。

「次の目的地は、ラシェル嬢が直前まで暮らしていたターザッカル伯爵邸。忌々しい家族を含め、多くの人間がいる場所なのでな。転移前に、俺達の存在を悟られないようにするんだ」
「そっか、そうだったんですね。……ターザッカル邸かぁ……。…………ね、セレ様。アレの前に・・・・一つだけ、お願いを聞いてくださいませんか?」
「お前には、輪の維持と滞在を任せることになったからな。望みを聞こう」
「ありがとうございますっ。ターザッカル邸に着いたら、行っていただきたいコトがあって――」

 ゴーチェは十数秒で手早く内容を伝え、セレスティンは短く頷きを返しました。

「ラシェルちゃんは望んでいないと思うし、しょうもないコトだと思うけど……。どうしても、この気持ちをぶつけときたいんです。お願いします」
「分かった。……ゴーチェ。お前のそういった性質、俺は嫌いではないぞ」

 セレスティンの両目が僅かの間細まり、そうしてゴーチェとの交信は終わりとなりました。そのため、

「ラシェル嬢の弟、ザック、マイク、妹ニア。安心してもらって構わない。再び笑い合える日が来ることを、約束しよう」
「「「チチチチチチチチチっ!」」」

 大事な兄弟に改めて誓い、改めて感謝をしたあと、認識阻害を実行。この世界の誰にも認識されなくなった2人は、転移用魔法陣を潜り次の目的へと移動したのでした。


 〇〇


 セレスティンとラシェルの次の移動先となった、ターザッカル邸。その内部では、同時刻――

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