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第6話 人間界にて~1つめの思い出の場所~ 俯瞰視点(2)
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「ラシェル嬢。今の貴女は、『理解』をすることはできないだろう。けれどそれでも、『感じる』ことはできるはずだ」
ゆっくりと、穏やかに、優しく。セレスティンは真っすぐ碧眼を見つめながら、言の葉を紡いでゆきます。
「……………………………………」
「俺は貴女の記憶を共有して、知っている。彼らがどれほどに大切な存在であるかを。叶うならばこの先も彼らと過ごしたかったと、強く思っていたことを」
ラシェルにとって3匹は、親友であり弟と妹のような存在。そのため昨日3匹に会いに行き、
『ごめんね、みんな。そのね……。私はとある方との婚約が決まって、もうすぐ隣国に行かなくちゃいけないの。残念だけど、もう会えないの』
『『『チチチチチ…………』』』
『急なお別れになって、ごめんなさい。……でもね。離れていても、心は一緒だよ。私は絶対に、みんなのことを忘れないよっ』
嘘を吐いて、さよならを行っていたのでした。
外出から帰った直後に起きた、家族によるあの悲劇。その前には、こういったことが起きていたのでした。
「ラシェル嬢。もう会えないと思っていた弟や妹が、目の前にいる。これからは好きなだけ一緒に過ごせるんだ」
「……………………………………」
「共に歌を歌ったり、共に散歩をしたり、共に木陰で昼寝をしたり。貴女が大切に思い、これからもずっと続けていたいと強く思っていた行動を、思う存分取れるんだ」
「……………………………………」
「ラシェル嬢。今貴女が感じているものを、言葉にして俺に教えて欲しい。……大切な人と様々な時間を共有し、あの頃のように笑い合いたい。イエスかノー、どちらだ?」
「………………………………」
ラシェルは引き続き、淡々と正面を見つめているだけ。その質問に対する返事はありません。
ですがセレスティンは諦めることなく問い続け、そっと斜め右と左を一瞥し――
「「「チチチチチチッ! チチチチチチチッ!」」」
彼女の『弟』と『妹』の力も借り、繰り返し問いかけます。
何度失敗しても、継続。セレスティンははっきりとした口調で、力強く質問を繰り返し――
「ラシェル嬢。今貴女が感じているものを、言葉にして俺に教えて欲しい。……大切な人と様々な時間を共有し、あの頃のように笑い合いたい。イエスかノー、どちらだ?」
こういったことが、21回繰り返された時でした。
「………………………………いえす…………」
不意に、ぽつりと。小さな小さな声が、ラシェルの口から零れ落ちたのでした。
ゆっくりと、穏やかに、優しく。セレスティンは真っすぐ碧眼を見つめながら、言の葉を紡いでゆきます。
「……………………………………」
「俺は貴女の記憶を共有して、知っている。彼らがどれほどに大切な存在であるかを。叶うならばこの先も彼らと過ごしたかったと、強く思っていたことを」
ラシェルにとって3匹は、親友であり弟と妹のような存在。そのため昨日3匹に会いに行き、
『ごめんね、みんな。そのね……。私はとある方との婚約が決まって、もうすぐ隣国に行かなくちゃいけないの。残念だけど、もう会えないの』
『『『チチチチチ…………』』』
『急なお別れになって、ごめんなさい。……でもね。離れていても、心は一緒だよ。私は絶対に、みんなのことを忘れないよっ』
嘘を吐いて、さよならを行っていたのでした。
外出から帰った直後に起きた、家族によるあの悲劇。その前には、こういったことが起きていたのでした。
「ラシェル嬢。もう会えないと思っていた弟や妹が、目の前にいる。これからは好きなだけ一緒に過ごせるんだ」
「……………………………………」
「共に歌を歌ったり、共に散歩をしたり、共に木陰で昼寝をしたり。貴女が大切に思い、これからもずっと続けていたいと強く思っていた行動を、思う存分取れるんだ」
「……………………………………」
「ラシェル嬢。今貴女が感じているものを、言葉にして俺に教えて欲しい。……大切な人と様々な時間を共有し、あの頃のように笑い合いたい。イエスかノー、どちらだ?」
「………………………………」
ラシェルは引き続き、淡々と正面を見つめているだけ。その質問に対する返事はありません。
ですがセレスティンは諦めることなく問い続け、そっと斜め右と左を一瞥し――
「「「チチチチチチッ! チチチチチチチッ!」」」
彼女の『弟』と『妹』の力も借り、繰り返し問いかけます。
何度失敗しても、継続。セレスティンははっきりとした口調で、力強く質問を繰り返し――
「ラシェル嬢。今貴女が感じているものを、言葉にして俺に教えて欲しい。……大切な人と様々な時間を共有し、あの頃のように笑い合いたい。イエスかノー、どちらだ?」
こういったことが、21回繰り返された時でした。
「………………………………いえす…………」
不意に、ぽつりと。小さな小さな声が、ラシェルの口から零れ落ちたのでした。
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