霊能師高校迷霊科~迷える霊を救う、たった一つの方法~

柚木ゆず

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3話(7)

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「迷っている弟さんを、消滅させる。これは最も良い選択なのでしょうか?」
「……アンタ、急になによ……っ。なにを言いたいの!?」
「………………このままだと、説得力がありません。少し、昔話をさせて頂きますね」

 先輩は一度天を仰ぎ、その体勢で密かに唇を噛んで。確かに後悔の色を覗かせ、視線を夢兎さんの顔に戻した。

「僕の祖父は清く真っ直ぐな人で、どんな時でも正しかった。悪巧みに乗れば金と地位が手に入るのに、断固として拒否をするような人間だったんです」
「……それが……。なんなのよ」
「ある時。とある会社の幹部だった祖父は同僚と共に副社長に呼び出され、『一緒に社長を嵌めて欲しい。自分が社長になった暁には相応のポジションを与えるぞ』と言われました。けれどもちろん祖父は断わり、『貴方には恩があるから、一度だけ見逃す。だけどもう一度下衆なことを考えたら報告するぞ』と警告したんです」

 提示された『安泰』を、蹴る。言うのは簡単だけれど、やるのは意外と難しい。善良な者であっても、将来を保証される、というのは魅力的なのだから。

「そうして、その騒動は終わり――にはならなかった。気が付くとなぜか祖父が失脚を企んでいることになっていて、祖父はクビ。悪巧みを提案した上司と賛成していた同僚は報告者となっており、社長に気に入られて退任後の昇進を約束されました」
「んむ……。ひどい、よ……」
「僕も、家族も憤慨しました。けれど祖父は『正しき者は報われ、悪き者には自然と罰がくだる。その時が来るのを静かに待とう』と、気にする様子はありませんでした」

 正しき者は報われる。悪き者には罰が下る、か……。

「けれど結局二人に罰が下ることはなく、逆に祖父は病気になってしまった。…………それを境に、祖父は変わってしまいましてね。『悪が得をし、善が損をする世の中なのか……?』が口癖になったんです」
「「「「…………」」」」
「祖父はそれを毎日毎日毎日繰り返し、やがてその口癖が正しいのだと認識してしまい……。沢山の怨みを抱いて逝き、同僚と上司を標的とした迷霊になりました」

 ここでもう一度天井を仰ぎ、今度はわからない。角度の関係でその表情を伺えなかったが、多分、先以上の苦痛を孕んでから視線を戻した。

「僕は嫌味を込めて『お世話になった二人』に死の報告をした帰りに見つけ、祖父の説得を試みました。でも僕は『本来の祖父の口癖』を証明できず、それは失敗に終わった。二人は良いポジションでピンピンしているし実体験がないから、心を動かせなかったのです」

 やっぱり、そうだった。この経験があるから先輩は、その『実体験』を得るためメンバーになったんだ。

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