低級令嬢の庭球物語

柚木ゆず

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第3話 二つ目の勝負(7)

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「ぐぅ……っ。まさか、ここでドロップを使うだなんて……っ。いつから頭にあったんだ……?」
「このラリーの最初、3回目が始まる時からよ。ミゲルのおかげで力が湧いてきたから、これを使って上手く騙せると思ったの」
「力が湧いているのに、別の方法を考えただって……っ。なぜ嬢ちゃんは、そんな事をしてるんだ……?」
(ヒューナ、僕もすごく不思議だよ。どうしてキミは、折角得たものだけを頼らなかったんだい?)
「その答えは、テニスは『冷静さ』も大事なスポーツだから。どんな時でも落ち着いて状況を俯瞰しないと勝利を掴めないから、それに従って判断したのよ」

 17年ぶりに実戦復帰した茜の技術とヒューナの肉体だと、パワーアップしたところで鉄壁を崩せはしない。そこでソレを利用した作戦を模索して、見つけたのよね。

「茜はヒューナより7センチも低い――156センチで体型もそこまでよくなかったから、あの頃のあたしはそういう面も磨いたの。全国出場は伊達じゃないわよ」
(そっか、そうだったんだね……! あのヒューナじゃ絶対にできない芸当だよっ)
(あたしは茜でありヒューナだから複雑なんだけど、とりあえず褒めてくれてありがと)「それじゃあ、ロブ家のレグヤ様。シューズを頂きますね」

 あたしが次に望むものは、靴。
 実はしっかり馴染むシューズだったら、もう少し動きが軽くなっていた。この差が次戦で命取りとなる可能性があるから、ウェアは後回しなのだ。

「……約束、だからな。領地内にある好きな工房に案内させるから、そこで勝手にフィッテングをするといい」
「はーい感謝しまーす。貴族様が『好きな工房』でと仰られたので、シューズは『ヨネス』製でおねがいしまーすっ」

 ちなみにヨネス製は、テークにおいて最高級品。日本だと一足15000円以上もする、高性能高品質なシューズなのよねっ。

「あはは……。今のヒューナは、色々と賢いよね……。僕はちょっとだけ、あの間抜けなヒューナが恋しくなったよ……」
「お褒めに与り、光栄です。兄貴分が謙虚で穏やかだから、妹分はこれくらいが丁度いいのよ」

 あたしはベッと舌を出して、心の中で『サンキュ』と一言。この勝利を支えてくれた人にコッソリ感謝をしてから、私設練習場を後にしたのでした。
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