低級令嬢の庭球物語

柚木ゆず

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第6話 決戦(9)

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「くそぉぉぉぉ! なんでだっ!! なんで入らねーんだよ……っ!」

 その理由は、感情が悪影響を与えたため。
 あたし達が行っているテニスは、特にメンタルが作用してしまうスポーツ。ちょっとした動揺や苛立ちで調子が崩れはじめ、やがて崩壊してしまう時が多々あるのだ。
 これは、信じられないと思うけど――。
 地球で活躍するプロの選手でも、フォルトは日常茶飯事。2連続でダブルフォルトをしてしまう人もいるくらいなのよね。

「あらあら、ポイントをありがとう。おかげで、ブレイクできそうな気がしてきたわ」
「ふん、そんな挑発には乗らねーよっ。天才が、天才たる所以。オレが人生の勝者である証を見せてやるよおおおおおおおお……!!」

 このゲーム、4度目のサーブ。それはお馴染みフラットサーブ、なのだけれど。今回のものは溜まった鬱憤が正しくエネルギーに変換されていて、威力もコースも最高のクオリティー。

《ユート・スピン VS ヒューナ・フラット 30‐30 (5‐5)》

 フルパワーで放たれた球はあたしの横を駆け抜け、ノータッチエースとなった。

「これ、これがオレだ。挑発が成功しなくて残念だったなぁ……?」
「今のに関しては、悔しいけどお手上げ。完全に一本取られたわ」
「そうだろうそうだろう。次も、今の――いいや。もっとすごいのがいくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……っ!!」

 調子が乗っているから、なのだろう。彼は先程よりもボールを高く放り投げ、豪快にジャンプ。高々と宙に舞ったユートは全力を込めて右腕を振り抜き、

《ユート・スピン VS ヒューナ・フラット 40‐30 (5‐5)》

 連続の、ノータッチエース。
 宣言通り更に強烈なフラットサービスが、コートの左隅を通過した。

「まさかダブルフォルトから、連続得点とはねぇ。またまた一本取られたわ」
「こいつもまた、天才にしかできない芸当だ。これで、あと1ポイントでキープ。このまま一気にいくぞおらあぁぁぁぁぁぁぁぁあ……!!」
「って風には、いかせないわよ。ここはこっちにとっても、大事な場面だからねっ」

 あたしはやって来たボールを、しっかり構えて両手打ちのバックでリターン。更にインパクト(ボールが当たる瞬間)の際に左から右斜め下へとボールを斬るように動かし、今までとは違った回転をかけた。

「ぁん? 今の打ち方はなんだ……?」
「その正体は、お楽しみ。さあ打ち返しなさい」
「……言われなくても、打ち返すに決まってんだろっ! どらあ――っぅ!」

 あたしが打ったボールは、バウンドすると左へと弾む。そのためフォアで打とうとしていたヤツから離れるように跳んで、虚を突かれた彼はフレームショット(ラケットの外側で打ってしまうことに)になってしまう。
 その結果、フレーム――本来当たるべきではない部分で打ってしまったため、ボールは明後日の方向に飛んでしまった。

《ユート・スピン VS ヒューナ・フラット 40‐40 (5‐5)》

 40で並んだ場合は、デュース。先に2連続で点を取った者が、このゲームを得られるようになった。
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