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第2話 理由を知ったから ブランシュ視点(2)
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「指輪を売っていないのなら、あちらが予想している売値150万をルピラールを用意しなければなりませんよね? そこで僕が、150万ルピラールをお貸ししましょう」
ですが、ご安心ください。時間を稼ぐ方法と、侍女たちに害が及ばなくなる方法を考えております。
そう、続けようとした時でした。
レリアトール様はそう口にされたあと馬車を一旦降り、お札の束を持って戻ってこられたのでした。
「作戦が半ばなのでしたら、不本意であっても家族を自由にさせておかないといけません。それに――貴方のような方は、150万をすぐに用意しなくてもいい時間稼ぎの術を用意しているのでしょうね。しかしそちらは、何かしらの苦労や苦痛を伴うに決まっている。そうでないと、そんなことは成立しませんからね」
……仰る通りです。
そちらには、わたしが激しい暴力を受ける、という代償が存在します。
「ですから穏便に乗り切れるよう――水面下で進行中の計画を落ち着いて進められるように、お貸ししたいと提案をさせてもらいました。いかがでしょうか?」
「…………そちらは、本当にありがたいご提案なのですが……。また、手を差し伸ばしていただくのは……」
「今回は『あげる』のではなく、『貸す』だけ。期限は設けないものの、いずれ返ってきます。大したものではありませんよ」
レリアトール様は札束を右手から左手、左手から右手へと持ち替え、穏やかな微苦笑を浮かべてくださりました。
「先ほど申し上げたように、お金は薬であるべきなのです。それに…………。貴方と出会えたことで、僕の中でも変化があったのですよ」
「??? 変化、ですか……?」
「そう、とても大きな変化です。なのでこちらとしても、借りてもらえると嬉しいのですよ。僕の我が儘を、聞いてはくれませんか?」
「…………何から何まで、ありがとうございます。ご厚意、ありがたく頂戴いたします」
ここまで言っていたただいて断るのは、それこそ失礼に当たります。ですのでわたしは深く腰を折り曲げさせてもらい、ですが今回は、すぐに口を開きます。
「わたしは本日沢山のものをいただきましたが、わたしは何一つレリアトール様にできてはおりません。わたしにできることでしたら、なんでもさせていただきます。何なりとお申し付けください」
お伝えしたかったのは、お礼。
わたしはレリアトール様のご厚意によって、いくつもの幸せをいただきました。それらはどれも感謝してもしきれないものでして、そうせずにはいられません。
「渡すだけ渡して、もらわない。はマナー違反ですよね。ええ、分かりました」
「っ、ありがとうございます! なんでも仰ってください」
「そうですね……。では、あれにしましょう」
十数秒ほどの思案のあと、小さく頷かれたレリアトール様。わたしの恩人様はにこやかな笑みを浮かべながら――
「定期的に僕と会って、お喋りをしてもらいたいです」
――え……!?
そのようなことを、仰られたのでした。
ですが、ご安心ください。時間を稼ぐ方法と、侍女たちに害が及ばなくなる方法を考えております。
そう、続けようとした時でした。
レリアトール様はそう口にされたあと馬車を一旦降り、お札の束を持って戻ってこられたのでした。
「作戦が半ばなのでしたら、不本意であっても家族を自由にさせておかないといけません。それに――貴方のような方は、150万をすぐに用意しなくてもいい時間稼ぎの術を用意しているのでしょうね。しかしそちらは、何かしらの苦労や苦痛を伴うに決まっている。そうでないと、そんなことは成立しませんからね」
……仰る通りです。
そちらには、わたしが激しい暴力を受ける、という代償が存在します。
「ですから穏便に乗り切れるよう――水面下で進行中の計画を落ち着いて進められるように、お貸ししたいと提案をさせてもらいました。いかがでしょうか?」
「…………そちらは、本当にありがたいご提案なのですが……。また、手を差し伸ばしていただくのは……」
「今回は『あげる』のではなく、『貸す』だけ。期限は設けないものの、いずれ返ってきます。大したものではありませんよ」
レリアトール様は札束を右手から左手、左手から右手へと持ち替え、穏やかな微苦笑を浮かべてくださりました。
「先ほど申し上げたように、お金は薬であるべきなのです。それに…………。貴方と出会えたことで、僕の中でも変化があったのですよ」
「??? 変化、ですか……?」
「そう、とても大きな変化です。なのでこちらとしても、借りてもらえると嬉しいのですよ。僕の我が儘を、聞いてはくれませんか?」
「…………何から何まで、ありがとうございます。ご厚意、ありがたく頂戴いたします」
ここまで言っていたただいて断るのは、それこそ失礼に当たります。ですのでわたしは深く腰を折り曲げさせてもらい、ですが今回は、すぐに口を開きます。
「わたしは本日沢山のものをいただきましたが、わたしは何一つレリアトール様にできてはおりません。わたしにできることでしたら、なんでもさせていただきます。何なりとお申し付けください」
お伝えしたかったのは、お礼。
わたしはレリアトール様のご厚意によって、いくつもの幸せをいただきました。それらはどれも感謝してもしきれないものでして、そうせずにはいられません。
「渡すだけ渡して、もらわない。はマナー違反ですよね。ええ、分かりました」
「っ、ありがとうございます! なんでも仰ってください」
「そうですね……。では、あれにしましょう」
十数秒ほどの思案のあと、小さく頷かれたレリアトール様。わたしの恩人様はにこやかな笑みを浮かべながら――
「定期的に僕と会って、お喋りをしてもらいたいです」
――え……!?
そのようなことを、仰られたのでした。
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(他「エブリスタ」様に投稿)
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