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第6話 良いことと、悪いこと ブランシュ視点(2)
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「ブランシュ、やったね。おめでとう!」
――わたし達がいつも会っている、リストランテの個室。席について報告をさせていただくやアルセーヌ様が拍手をしてくださり、笑顔で祝福をしてくださりました。
「5年の努力が、ついに形になったんだね。おめでとう。本当におめでとう」
「ありがとうございます……! ずっと積み重ねていたものが、ようやく形になりました」
この計画は12歳の頃からずっと進めていた、大きな困難が伴うもの。たくさんの苦労をしてきたのでこみ上げるものは多くあり、つい何度めだかの達成感を含んだ安堵の涙が零れました。
「でも今日この場で嬉し涙を流せるのは、アルセーヌ様の存在があったからです。あの出来事、精神的な刺激であり支えのおかげで、ここまで早く達成することができました」
当初の予定は残り1年で、それを3か月間と半分ほどで行えてしまった。それは何度も申し上げましたが、帰路で浮かんだアイディアがあったからなのですよね。
「あの機転のおかげで時間は短縮されましたし、計画自体の安全性も増しました。以前の手紙でお伝えさせていただいたように、叔父もわたしも感謝してもしきれません」
「そう言ってもらえて、光栄だよ。君の役に立てて嬉しい」
アルセーヌ様は我が事のように喜んでくださり、鈴を鳴らしてスタッフさんを――以前紹介していただいた、知人のミラオさんを呼ばれました、
(………………と、いうわけなんだ。今からお願いできるかな?)
(アルセーヌの頼みとあれば、断るわけにはいかない。オーケー、任せてくれ)
(助かるよ)
そうしてアルセーヌ様はコソコソ話を行い、そちらが終わるとミラオさんはお部屋を去ってしまいました。
「??? 今のは……?」
「しばらくは内緒にさせて欲しい。あとで、ちゃんと説明するからさ」
「は、はい。承知しました」
「ありがとう。じゃあ始めようか、少し早いランチをね」
お食事をしながらお喋りをする。そちらが毎回の過ごし方で、とっても楽しい時間の幕が上がりました。
「こちらもあと少し、1か月ほど実行に移せるようになる。せっかくだから一緒に完成させたかったのだけどね、一度折れてしまったロスが大きかったよ」
「一度止まってしまうと、進む際は余計にエネルギーを使う。再開は、とても、とても大変なことです。1か月の遅延で済んでいるのは流石だと思います」
「はは、ありがとう。その程度の遅れで収まっているのも、ブランシュの存在があったからこそだよ。僕も何度も、君のお世話になっている。特に顔は、ブランシュと出会った時と比べると、別人のようになったんじゃないかな」
「ええ、そうですね。クマはなくなり、頬の『こけ』もなくなり、肌の艶もとてもよくなりました。なにより、瞳に光が満ちています」
「身体も軽くて、活気が漲っていると分かるよ。……あの時、君と出会えて本当によかった。君には救われたよ」
「そちらに関しても、わたしも同じ、です。……あの時おばあ様の指輪を守っていただけて、150万もの大金を貸していただけて、そこから大げさではなく世界が変わりました」
「いけない、ついつい真面目な話ばかりになっていたね。そろそろ軌道を修正しようか」
「ですね。そういえば今日移動中に、面白い形の雲を見つけたんですよ」
「へぇ。どんな形だったの?」
「絵を描くときに使う、パレットにそっくりだったんです。ちゃんと指を通す穴まで開いていて、あのような雲は初めて見ました」
「それは珍しいね。パレットの形によく似ている雲なら見掛けた経験があるけど、穴が開いてはいなかった。一度見てみたいよ」
「わたし達は、同じが多いですから。近々、同じように目撃できるような気がします」
「それもそうだね。楽しみにしていようかな」
このように今回も色々なお話しをして賑やかな時間が過ぎていって、??? ランチが終わった、その直後のことでした。
「少しだけ目を閉じていてもらえるかな?」
「は、はい。分かりました」
突然、不思議なお願いをされました。
こちらは……なんなのでしょうか……?
――わたし達がいつも会っている、リストランテの個室。席について報告をさせていただくやアルセーヌ様が拍手をしてくださり、笑顔で祝福をしてくださりました。
「5年の努力が、ついに形になったんだね。おめでとう。本当におめでとう」
「ありがとうございます……! ずっと積み重ねていたものが、ようやく形になりました」
この計画は12歳の頃からずっと進めていた、大きな困難が伴うもの。たくさんの苦労をしてきたのでこみ上げるものは多くあり、つい何度めだかの達成感を含んだ安堵の涙が零れました。
「でも今日この場で嬉し涙を流せるのは、アルセーヌ様の存在があったからです。あの出来事、精神的な刺激であり支えのおかげで、ここまで早く達成することができました」
当初の予定は残り1年で、それを3か月間と半分ほどで行えてしまった。それは何度も申し上げましたが、帰路で浮かんだアイディアがあったからなのですよね。
「あの機転のおかげで時間は短縮されましたし、計画自体の安全性も増しました。以前の手紙でお伝えさせていただいたように、叔父もわたしも感謝してもしきれません」
「そう言ってもらえて、光栄だよ。君の役に立てて嬉しい」
アルセーヌ様は我が事のように喜んでくださり、鈴を鳴らしてスタッフさんを――以前紹介していただいた、知人のミラオさんを呼ばれました、
(………………と、いうわけなんだ。今からお願いできるかな?)
(アルセーヌの頼みとあれば、断るわけにはいかない。オーケー、任せてくれ)
(助かるよ)
そうしてアルセーヌ様はコソコソ話を行い、そちらが終わるとミラオさんはお部屋を去ってしまいました。
「??? 今のは……?」
「しばらくは内緒にさせて欲しい。あとで、ちゃんと説明するからさ」
「は、はい。承知しました」
「ありがとう。じゃあ始めようか、少し早いランチをね」
お食事をしながらお喋りをする。そちらが毎回の過ごし方で、とっても楽しい時間の幕が上がりました。
「こちらもあと少し、1か月ほど実行に移せるようになる。せっかくだから一緒に完成させたかったのだけどね、一度折れてしまったロスが大きかったよ」
「一度止まってしまうと、進む際は余計にエネルギーを使う。再開は、とても、とても大変なことです。1か月の遅延で済んでいるのは流石だと思います」
「はは、ありがとう。その程度の遅れで収まっているのも、ブランシュの存在があったからこそだよ。僕も何度も、君のお世話になっている。特に顔は、ブランシュと出会った時と比べると、別人のようになったんじゃないかな」
「ええ、そうですね。クマはなくなり、頬の『こけ』もなくなり、肌の艶もとてもよくなりました。なにより、瞳に光が満ちています」
「身体も軽くて、活気が漲っていると分かるよ。……あの時、君と出会えて本当によかった。君には救われたよ」
「そちらに関しても、わたしも同じ、です。……あの時おばあ様の指輪を守っていただけて、150万もの大金を貸していただけて、そこから大げさではなく世界が変わりました」
「いけない、ついつい真面目な話ばかりになっていたね。そろそろ軌道を修正しようか」
「ですね。そういえば今日移動中に、面白い形の雲を見つけたんですよ」
「へぇ。どんな形だったの?」
「絵を描くときに使う、パレットにそっくりだったんです。ちゃんと指を通す穴まで開いていて、あのような雲は初めて見ました」
「それは珍しいね。パレットの形によく似ている雲なら見掛けた経験があるけど、穴が開いてはいなかった。一度見てみたいよ」
「わたし達は、同じが多いですから。近々、同じように目撃できるような気がします」
「それもそうだね。楽しみにしていようかな」
このように今回も色々なお話しをして賑やかな時間が過ぎていって、??? ランチが終わった、その直後のことでした。
「少しだけ目を閉じていてもらえるかな?」
「は、はい。分かりました」
突然、不思議なお願いをされました。
こちらは……なんなのでしょうか……?
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