最愛の人が、元婚約者にしつこく復縁を迫られているらしい

柚木ゆず

文字の大きさ
6 / 30

第2話 ピエールという男~復縁を求め始めた理由~ 俯瞰視点(2)

しおりを挟む
「なっ!? あれが、ルーシーだって!?」

 それはたまたま、行きつけのレストランテを訪れた時のことだった。お茶会仲間か何かで、集まっていたのだろう。店に入ってゆく4人の令嬢がいて、その中に元婚約者のルーシー・レーズリックがいた。
 そうして僕はおよそ1年半ぶりに、彼女を見掛けたのだが……。まるで、別人だった。

 キラキラと輝く、宝石のよう。

 各パーツ――容姿は当時と殆ど変わっていないのに、全くの他人だと思うほどに、美しかった。まるで常時スポットライトが当たっているかのように眩しく、一瞬にして目を奪われてしまったのだ。

((たった1年半で、こんなにも変わるだなんて……。なにがあったんだ……!? どうしてこんな風になって――そっ、それはどうでもいい!!))

 1番だ! ルーシーが1番だ! ダントツだ!
 ルーシーと一緒にいたい。ルーシーと結婚したい。ルーシーと復縁したい。

 そんな感情が間欠泉の如く噴き出してきて、あっという間に僕の頭の中はルーシー一色となってしまった。
 なので――

「ステファニー、君との婚約は今日を以て解消する。慰謝料はちゃんと払ってやるから安心しろ」
「そんなっ、あっ、安心なんてできませんわっ!! ピエール様っ、お考え直しをっ!」
「いくら考え直しても、2番を好きになるはずがない。……食い下がるなら父上、それにゼネベック卿とじっくり話しをしてもらうことになる。それでもいいんだな?」

 ――こうして即日ステファニーとの縁を切り、レーズリック伯爵家へと馬車を飛ばした。そして、

「僕が間違っていた」
「君以上に素敵な女性は、いなかった」
「ステファニーとの関係は絶ったから、あの頃に戻りたい」

 しっかりとした誠意を見せてそう訴え、けれど、彼女の首が縦に振られることはなかった。
 だが当然諦められるはずはなく、まだ・・誰かの手を借りはしない。さらに誠意や愛を込めたアタックを繰り返し行い、ふふふふふ。

 どうやら懸命な接触によって、僕のことが再び気になり始めたらしい。

「ルーシー、ゆっくり君と話したいんだ。お屋敷の中に入れてはくれないかな?」
「畏まりました。こちらへどうぞ」

 アタックを始め8日目、ついに応接室へと通されたのだった。
 よしよしよし、いい調子だっ! ここでもっと距離を縮めて、一気にヨリを戻すぞ!!

しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

心の傷は癒えるもの?ええ。簡単に。

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢セラヴィは婚約者のトレッドから婚約を解消してほしいと言われた。 理由は他の女性を好きになってしまったから。 10年も婚約してきたのに、セラヴィよりもその女性を選ぶという。 意志の固いトレッドを見て、婚約解消を認めた。 ちょうど長期休暇に入ったことで学園でトレッドと顔を合わせずに済み、休暇明けまでに失恋の傷を癒しておくべきだと考えた友人ミンディーナが領地に誘ってくれた。 セラヴィと同じく婚約を解消した経験があるミンディーナの兄ライガーに話を聞いてもらっているうちに段々と心の傷は癒えていったというお話です。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

婚約者を奪われるのは運命ですか?

ぽんぽこ狸
恋愛
 転生者であるエリアナは、婚約者のカイルと聖女ベルティーナが仲睦まじげに横並びで座っている様子に表情を硬くしていた。  そしてカイルは、エリアナが今までカイルに指一本触れさせなかったことを引き合いに婚約破棄を申し出てきた。  終始イチャイチャしている彼らを腹立たしく思いながらも、了承できないと伝えると「ヤれない女には意味がない」ときっぱり言われ、エリアナは産まれて十五年寄り添ってきた婚約者を失うことになった。  自身の屋敷に帰ると、転生者であるエリアナをよく思っていない兄に絡まれ、感情のままに荷物を纏めて従者たちと屋敷を出た。  頭の中には「こうなる運命だったのよ」というベルティーナの言葉が反芻される。  そう言われてしまうと、エリアナには”やはり”そうなのかと思ってしまう理由があったのだった。  こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。

処理中です...