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第6話 約束の意味 ティファニー視点
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「レオナルド・ラインメーズ。彼はミントだと気が付いた時から、君に向けて醜悪な殺気を放っていたんだよ。それを看過することはできなかったんだ」
フィベールさんは、実戦経験が多々ある騎士団長。長年の修行と経験によって、わたしには分からないものを感じることができます。
わたしだと気付いたレオナルド様は、ずっとわたしをその手で殺したがっていたそうです。それも、残酷さを伴うやり方で。
「あの男はすでに、ティファニーは疫病神ではなかったと理解していた。けれどそれでも、いろいろと納得できなかったんだろうね。ずっと君に逆恨みをしていて、姿を目にしたことで感情が爆発した。会話している間に、5……6回は、心の中で殺めたはずだ」
「……そうでしたか。あの方らしいお考えです」
「ティファニーの意思を尊重して、過去の出来事には首を突っ込まないと決めていた。けれど愛する人にあんな負の感情を向けられてしまったら、君の騎士としては見過ごせなかったんだ。どうしてもね」
さっきは我を通してしまい、ごめん――。続いてそんな風に謝ってくれて、わたしは即座に首を左右に振りました。
「大切な人が怒ってくれて、わたしは嬉しい、幸せです。フィルベールさん、ありがとうございました。今この胸の中には、感謝しかありません」
「そう言ってもらえて、ホッとしたよ。……あの男と会うのは最初で最後だから、あの場で何かしらしたかった。仕掛ける機会をくれて、本当にありがとう」
「いえ、それもわたしのために行ってくだ――あれ? 最後……?」
今。フィルベールさんは最後、もう会うことはないと言いましたよね?
「? ?? 別れ際に、一年後に確認する約束をしていましたよね……? なのに、もう会わないのですか?」
「うん、会わない。一年後にあの場所に行きはしないよ。あれはね、あの男を――あの男を含めた商会関係者を、かき回すために行った嘘の約束なんだよ」
あの様子ならレオナルド様でありハピンズ商会は、衰退を辿っていて自力での立て直しは不可能な状況になっているはず。でもあんな風に言われたしまったら、あのような性格の持ち主は逆ギレをして何が何でも一泡吹かせようとする。
何も持っていない状態で無能が躍起になって動いたら、面白いことになる。
フィルベールさんは、そういったことを考えていたようです。
「今回一度だけの接触で、どうやれば一番引っ掻き回せるか? あの時浮かんできたものの中でベストなアイディアが、それだったんだ」
「あの一瞬で作戦が浮かんで、あんなにも自然に相手を操るだなんて。さすが、智を兼ね備えたグリフォン騎士団の団長ですね」
「僕が今『智を兼ねた』人間でいられるのは、あんな風に堂々と振る舞えるのは、ティファニーのおかげだよ。いつもありがとう」
優しくて温かい、微笑み。わたしが大好きなものを向けてくれたあと、フィルベールさんは小さくポンと両の手のひらを合わせました。
「じゃあさっきの話はこれで終わりにして、違う話をしよっか。せっかくの新婚旅行だしね」
「そうですね、そうしましょう。そういえば、週末にある『シャーンス』での『春の豊穣祭』なのですが――」
わたしにもフィルベールさんにも、移動しながら話したいことが沢山ありました。ですのでパッと話題は変わり、再び――。
愛と幸せを感じながら行う移動が、はじまったのでした。
〇〇
こうしてティファニーとフィルベールは薔薇色の時間を過ごし始めましたが、レオナルドにそんな時間が訪れることはありませんでした。
一年後の約束を交わし、激怒しながらあの場を去ったレオナルド。
彼は顔を真っ赤にしたまま、お屋敷へと飛ぶように帰って――
フィベールさんは、実戦経験が多々ある騎士団長。長年の修行と経験によって、わたしには分からないものを感じることができます。
わたしだと気付いたレオナルド様は、ずっとわたしをその手で殺したがっていたそうです。それも、残酷さを伴うやり方で。
「あの男はすでに、ティファニーは疫病神ではなかったと理解していた。けれどそれでも、いろいろと納得できなかったんだろうね。ずっと君に逆恨みをしていて、姿を目にしたことで感情が爆発した。会話している間に、5……6回は、心の中で殺めたはずだ」
「……そうでしたか。あの方らしいお考えです」
「ティファニーの意思を尊重して、過去の出来事には首を突っ込まないと決めていた。けれど愛する人にあんな負の感情を向けられてしまったら、君の騎士としては見過ごせなかったんだ。どうしてもね」
さっきは我を通してしまい、ごめん――。続いてそんな風に謝ってくれて、わたしは即座に首を左右に振りました。
「大切な人が怒ってくれて、わたしは嬉しい、幸せです。フィルベールさん、ありがとうございました。今この胸の中には、感謝しかありません」
「そう言ってもらえて、ホッとしたよ。……あの男と会うのは最初で最後だから、あの場で何かしらしたかった。仕掛ける機会をくれて、本当にありがとう」
「いえ、それもわたしのために行ってくだ――あれ? 最後……?」
今。フィルベールさんは最後、もう会うことはないと言いましたよね?
「? ?? 別れ際に、一年後に確認する約束をしていましたよね……? なのに、もう会わないのですか?」
「うん、会わない。一年後にあの場所に行きはしないよ。あれはね、あの男を――あの男を含めた商会関係者を、かき回すために行った嘘の約束なんだよ」
あの様子ならレオナルド様でありハピンズ商会は、衰退を辿っていて自力での立て直しは不可能な状況になっているはず。でもあんな風に言われたしまったら、あのような性格の持ち主は逆ギレをして何が何でも一泡吹かせようとする。
何も持っていない状態で無能が躍起になって動いたら、面白いことになる。
フィルベールさんは、そういったことを考えていたようです。
「今回一度だけの接触で、どうやれば一番引っ掻き回せるか? あの時浮かんできたものの中でベストなアイディアが、それだったんだ」
「あの一瞬で作戦が浮かんで、あんなにも自然に相手を操るだなんて。さすが、智を兼ね備えたグリフォン騎士団の団長ですね」
「僕が今『智を兼ねた』人間でいられるのは、あんな風に堂々と振る舞えるのは、ティファニーのおかげだよ。いつもありがとう」
優しくて温かい、微笑み。わたしが大好きなものを向けてくれたあと、フィルベールさんは小さくポンと両の手のひらを合わせました。
「じゃあさっきの話はこれで終わりにして、違う話をしよっか。せっかくの新婚旅行だしね」
「そうですね、そうしましょう。そういえば、週末にある『シャーンス』での『春の豊穣祭』なのですが――」
わたしにもフィルベールさんにも、移動しながら話したいことが沢山ありました。ですのでパッと話題は変わり、再び――。
愛と幸せを感じながら行う移動が、はじまったのでした。
〇〇
こうしてティファニーとフィルベールは薔薇色の時間を過ごし始めましたが、レオナルドにそんな時間が訪れることはありませんでした。
一年後の約束を交わし、激怒しながらあの場を去ったレオナルド。
彼は顔を真っ赤にしたまま、お屋敷へと飛ぶように帰って――
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