大好きな人の幼馴染は、とても酷い人でした

柚木ゆず

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第8話 物語のような未来を手に入れるために アリア視点(4)

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「………………なんてことなの……」
「ひどい……ひどすぎます……。最後の最後で、こんなことになるだなんて……」
「「「「「……………………」」」」」
 お母様が天を仰ぎ、エリネアがおもわず崩れ落ち、リベイル家の方々が言葉を失い頭を抱える。
 そんなことになってしまっている理由は、天気にあります。

 ザーザーという雨音。

 馬車の外では、滝のような激しい雨が降っているのです。

「神様……。どうしてこのようなことを、なさるのですか……」
「お嬢様が、熱を出しながらも奮闘されているのに……。なぜ、なのですか……!?」
「「「「「……………………」」」」」
「お母様、エリネア、ゲイン様、リック様、ロンド様、ニコル様、ニーズ様、これまではずっと晴れでした。晴れがこんなにも続いていたことが非常に珍しいのですから、空もたまには雨を降らせたくなりますよ」

 嘆いても仕方がありません。
 これまで降る予定だった雨が、ついつい一度に来てしまった。
 わたしはそう思うようにして、にこりと微笑みました。

「「「「「…………アリア様……」」」」」
「アリア……」
「お嬢様……」
「どうせ水に濡れるのですから、大して変わりませんよ。そろそろ時間が来てしまいますし、行ってまいりますね」

 ここまで来た以上、退くという選択肢はありません。
 わたしは滝のような雨を浴びながら水に入り、

((レイオン様。レイオン様。レイオン様。レイオン様))

 胸の前で両手を組み、両目を瞑り、心の中で大切な――大好きな人の元気な姿を思い浮かべます。

((レイオン様。レイオン様。レイオン様。レイオン様))

 全身が寒い。身体からものすごい速さで熱が逃げていくのが分かる。
 手足が勝手に震え始めた。歯もひとりでに震え始めた。

 ――死――。

 寒さで死んでしまうかもしれない、と感じるようになった。
 でも。
 止めない。

((レイオン様。レイオン様。レイオン様。レイオン様))

((レイオン様。レイオン様。レイオン様。レイオン様))

 全身を震わせながら祈り続け――。歯を食いしばりながら祈りを続け――。
 ほとんど、五感のひとつの触覚を失ってしまった頃――

 カーン カーン カーン カーン

 ――13回の鐘が鳴り響き、午後1時になったと伝えてくれたのでした。

「…………レイオン、様」

 わたし、頑張りました。
 30日、やり通しました。

 やっと、お返しが出来ました……!!
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