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第7話 転げ落ちる、4人(2)

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「え……? ララ……? セドリック殿と、ラーティア殿も……。どうされたのですか……?」
「お集りの皆様、突然申し訳ありません。我々はどうしても、ここでお伝えしなければならない事があるのです!」

 ステージの先頭に立ったセドリックさんが、両手を高く上げつつ大きな声を上げます。
 ここは王族の城で、警備の方は大勢いますからね。いくら信頼されている人物であっても、安全を主張しておかないと取り押さえられてしまいます。

『『『『『伝えなければ、ならないこと……? 一体、なんなのでしょう……?』』』』』

「それは……。先月起きた娘ミーナの婚約破棄は、我々三人とフェリクス殿下の策略だったというお話です」

 その言葉を言い終わるや否や、会場の空気は一変。非常にざわついたものとなりました。

「皆様もご存じのあの日の出来事は全て、我々が仕組んだもの。『ミーナではなくララを王太子妃にしたい』、『ミーナではなくララと結婚したくなった』という双方の希望が一致した為、我々がミーナを脅してああさせたのです」
「ミーナはワタシの子供ではなく、前妻の子。この人が今回のように策謀を巡らせ追い出してしまった人の、子供なんです。なので以前からこの子が憎く、ララが恋をしたのであれば王太子妃にさせたくなかったのです……」
「お姉ちゃん以外は、ずっと前からその事実を知っていて……。私達はお姉ちゃんが小さな頃から、三人でイジメていました……。暴力を振ったり、暴言を吐いたりしてました……」

 催眠術の存在を知らせると、何かと面倒ですからね。一部を改変して、ラーティアさん達は語ります。

「ワタシ達にとって、殿下にとっても、ミーナは邪魔な存在。いつ真相を流布するか分かりません。そのため心身共に追い込み、後日服毒自殺をさせるつもりでした……」
「……散々な目に遭わせて、最期はもっともっと散々な目に遭わせる。私たちは昨夜ようやく過ちに気付き、でも、もう引き返せないから黙っていようと思いました。だけど…………やっぱり、いけない。そう考え直し、この場で告白して罪を償うことにしました……」
「婚約破棄の暗躍。毒殺。そして自分は、罪を捏造しての追放。我々は、殿下を含めここにいる四人は、大変な罪を犯しました……」
「私たちは、どんな罰でもお受けします。自白の際に適用される減刑は不要で、厳しい罰を受ける覚悟です。ですので国王様、私たちの身柄を拘束してください……っ」
「まっ、待つんだっ! 待ってください!! この者達が言っている内容は、一部間違っている! みなさんっ、父上母上っ! 俺は一切関与してはいません!!」

 この罪状を受け入れたてしまえば、王太子の資格どころか王族としての地位を剥奪され、罪人となります。そのためフェリクス様は目を剥き、必死に会場中を眺め回しました。

「ああ言いながらも彼らは減刑の適用を企んでおり、少しでも罪を分散させるために協力者の存在を用意しようとしています! 俺は断じて、そんな要望をしてはいません!!」
「……いいえ、それは嘘です。我々と殿下は、間違いなく仲間でした」
「ええ。ワタシも、断言します」
「私も、パパとママと同じです。確かに共謀しました」

 否定を、即座に否定。三人は揃って、大きく首を左右に振りました。

『『『『『殿下……』』』』』
「……フェリクス……。お主は、やはり……」
「ちっ、違う! 違います父上っ! これは妄言で、俺は――そうだっ、そうだっっ! 証拠はどこにあるっ? 俺が噛んでいたという証拠はどこにあるんだっっ!?」

 怖い顔でステージに上がってきた国王様に言い訳をしていた彼は、急に勢いづきました。
 どうにか言い逃れできる手を見つけた――。そう思い込んで。

「殿下。フェリクス殿下」
「な、なんだ? どうした、セドリック……」
「こちらにある粉が、証拠です。これは殿下の知人である薬師の方に用意していただいたもので、その方に連絡すれば証明していただけますよ」

 三人は裏切るはずのない味方だったため、フェリクス様は油断してしまいました。おかげで犯人へと繋がる確証が手に入っていて、はい。あっさりと、言い訳はできなくなりました。

「殿下、諦めましょう。我々は、罪を償わなければならないのです」
「き、貴様…………最後の最後で、裏切るなんて……っっ。良心など微塵もないお前達が、なぜ――」
「そんな事は、どうでもよい。この者達を連れていってくれ」

 フェリクス様の恨みに満ち満ちた声は遮られ、衛兵が四人を拘束しました。
 自ら打ち明けている上に、この場に証拠がありますからね。どう足掻いても無駄、です。

「嫌だっ! 離せっ! はなせぇぇっ!! 俺は王太子っ! 時期国王様なのだぞ!?」
「それは、先ほどまでの話だ。身勝手な理由で理不尽な振る舞いをしたお前にはもう、ファーフの姓はない」
「「「フェリクス様、諦めましょう。一緒に、この罪を一生かけて償いましょう」
「く、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! くそおぉぉぉぉぉぉぉおおおお!! くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 フェリクス様は喉が裂けんばかりに大音声をあげ、ぱたん。三人達と共に扉の向こう側へと消え、こうして――。今回、そして十八年前の騒動は、全て解決したのでした。
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