私は貴方を大好きなのに、前世の私が貴方を嫌っている

柚木ゆず

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9話 因果の応報(2)

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「『ひ……。ひが、ほのおに、なっていく……っ』」

 無事解放されたエリスは、安堵する暇もなく唇を震わせます。
 最終的に一族を死に至らしめたのは、大きな炎。更なるトラウマが襲い掛かり、心を容赦なく抉ります……。

「『いや……。いや……っ。いや――』」
「ワルツ殿、傍には俺がいます。この火炎は貴方を苛みはしませんので、ご安心ください」

 クロードさんは落ち着いた様子でエリスの顔を覗き込み、ふわり。「触れる事をお許しください」という言葉と共に、私は抱きかかえられました。

「『あ、あんた……』」
「今し方の約束を守るため、これより脱出します。少々揺れますので、お気を付けください」
「『わ、分かった……。お、お願い』」

 動揺が薄くなっているエリスはコクリと頷き、それを合図として力強く床が蹴られます。
 クロードさんは馬術や弓術の心得がある、運動神経が優れた人。そのため廊下や階段を颯爽と駆け、火の回りが早かったのですが――。火の粉がかかることさえもなく、建物から外へと出られました。

「ぎぃぃぃぃぃ……っ。痛い……っ。いたい……っっ。いたぃぃぃぃぃ……っ」
「…………。…………。どうして、こんなことに……」
「もう、なにもかも終わりですわ……。ワタシの家も……。ワタシ達も……」
「不幸中の幸い、周りに建物はない。被害はウチだけで済んでよかった」

 呻いたり放心状態になったりしている三人の横で、クロードさんが安堵します。
 ですが、そのすぐあとでした。降ろしてもらったエリスが、俯きがちに彼の服を引っ張りました。

「『けど……。あたしのせいで、お前の住む場所も沢山も物もなくなった……。助けてくれて、ありがとう……。ごめん、なさい……』」
「ワルツ殿、貴方は被害者です。謝罪するのはこちらですよ」

 クロードさんはすぐに否定をして、「それに」と続けます。

「火で全てを奪った先祖が築いた家が、財が、火によって奪われる。全ては因果の応報で、きっとこれが正解なのでしょう」
「『………………』」
「ですので、お気になさらないでください。何もかもが、当然の報いなのですから」
「『………………お前は、いつもそうなのよね……。責任感が強くて、思いやりがあって……。やっと、あたしは……。真実に――っっ』」

 声を震わせていたエリスは、突然息を呑みました。
 漏れている感情は、焦り。どうされたのでしょうか?

「『……今すぐに、行きたい場所があるの。コイツらを取り押さえたら、急いであたしが言うところを目指して!』」
「畏まりました。至急、整えます」

 その言葉を受けたクロードさんは、煙を見て集まってきた人々に経緯を説明して身柄を託してから、戻る際に使用した馬に乗って出発。要望によってお馬さんには全力疾走をしてもらい、私達は南の方角を目指したのでした。

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